神と黒蟹県
『黒蟹県』は著者が架空で作った地名です。
読み始めてすぐにこの本を参照したのでは、と。想像力のある、こういう作業が好きな方には永遠に広がる楽しい世界のように思えます。
帯には『まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集』。
絲山さんを読むのは久しぶり。独特な空間ですが、心地よさがあります。
【(略)これがスマホだったらまだ、同じ水槽..
衿 at 2024-03-29 15:00
居心地のいい場所へ
居心地のいい場所へ 随筆集 あなたの暮らしを教えてください (随筆集 あなたの暮らしを教えてください 3)
- 出版社/メーカー: 暮しの手帖社
- 発売日: 2023/05/19
- メディア: 単行本
絲山秋子サンは最近書いていないのかなぁ~? と検索していて見つける(暮しの手帖セレクション)。70数名の寄稿。それぞれにこの短さの随筆もよい。興味ある名が続く。
まず絲山さん《2017年》。
【群馬に移住して12年が経った。~もとから縁のある土地ではなかったことを忘れてしまうほどに..
衿 at 2023-08-02 14:00
まっとうな人生
絲山さんの作品はすべて読んできている。
『逃亡くそたわけ』の続編ということだが、このblog開始以前に記録していたようで、今はその内容をうまく思い出せない。
あいかわらず導入部から気負いがなく、入りやすいなぁと感じる。
コロナ生活もちらちら描かれる。
【~あたしには自分の家の生活がある。でも、着陸する前にしばらく旋回したい気分なのだった。】
衿 at 2022-07-10 20:00
猫に教わる
以前読んだ医師の、今度は小説でなく最新のエッセイ。このあとも待ち人多し。
【病棟への階段を昇ろうとする足が一歩も前に出なくなったのは38歳のころで、以降は坂を転げ落ちるがごとく、出勤不能の状態に陥った。】
死と多く接する仕事だからか、精神を病む。心身のバランスを保つために書き始めた小説は、世に認められる。
文中には、絲山秋子さんとの対談のことも。彼女も同じ芥川..
衿 at 2022-06-06 20:00
御社のチャラ男
最近、よくあるパターンの構成。絲山さんの作品には2種類あると感じている(大きくは①と②。これは私向きではない②の方)。おもしろいと思うエピソードももちろんあったが。
小説なのでネタバレは避けたいのですが、「こども食堂」について…があって、あー、そういうチケットの仕組みがあるのだと知りました。これはどこでもそうなのでしょうか。
このへんまでにしておきます。
衿 at 2020-03-12 15:00
第2回『衿賞』
私がこの半年で読んだものより。
絲山さんご自身の経験によるご本もありましたが、ここではこれに。
すーっとその世界に持っていってくれる、それが小説の醍醐味です。
衿 at 2019-07-18 20:00
絲的ココロエ 「気の持ちよう」では治せない
絲山秋子さん、ご自身の双極性障害(躁うつ病)のことを一冊にまとめられました。『こころの科学』連載を加筆・修正に+α。
これも読んでよかった。私はいろいろと知らなすぎた、と。
ブルーになったり、滅入ってやる気が起きない時…誰でも気分の乗らない時はあります。でもサブタイトルにあるように「気の持ちようでは治せない」ということなのです。..
衿 at 2019-06-19 16:00
夢も見ずに眠った。
絲山さん、久しぶりでした。心地よい。現代作家で、単行本刊行をすべて追っているのは、今では(つまりはもう脱落したヒトもいる)私この人ひとりだけと思います。→《第2回衿賞》
どこかで書いたと思いますが(以前設けていたHP『衿とAyu』の読書記録内かと)、芥川賞受賞の際、「私は時々鬱と共に生きている」と隠さず話されていました。そのようなこともあって2006年の..
衿 at 2019-04-08 05:00
小松とうさちゃん
「見舞い屋」のしごと。入院患者の話し相手。家族のようにふるまったり、部下の立場で会話したり。トラブルを避けるため、以前訪ねたことのある病院の、別患者からの依頼には応じない・笑。
ちょっとおもしろい登場人物の設定で、どうなるのかとヒヤヒヤもある。はやり(?)の別次元の世界が織り込まれているのだが、リア充(現実の生活が充実、のことね)の方で幸福を感じないと、人..
衿 at 2016-03-03 20:00
薄情
【~工房に来るひとはある程度一定していた。一定して、どこか世間とずれているような、ずれていてもかまわないという覚悟を持っているようなひとたちなのだった。】
先日読んだ長嶋氏の「ジャージー二人」と偶然なのだろうが、設定がよく似ていて(無職の中年にさしかかった男性)どっちがどっちかわからなくなりそう。
妻子連れの友人と食事をすることになり、完全に家族→幼児中心の会話になだれ込む..
衿 at 2016-02-09 20:00
離陸
絲山さん、これは秀作です。今までの作品の中では最高峰と思います。到達した~という感じ。
女性作家ですが、男性的なさっぱりさがある。また男の主人公、好感でした。
これから読む予定の方は、ここまでで~。
【下の妹の茜は生まれつきの視覚障害でぼくの表情は見ることはできないのだが、勘が鋭いというのか、ちょっとした感情の変化がすぐにばれてしまう。~
(仏に遊びにきて)「..
衿 at 2014-12-27 06:00
忘れられたワルツ
「恋愛雑用論」「神と増田喜十郎」がよかった。
恋:【「えーとですね、日下部さんのまわりのすべてのものを『ためにある』『ためにならない』
『得になる』『得にならない』の四つに分類してみてください」
「ちなみにためになるとは個人のことで、得になるとは社会のことです。社会の得というのは経済的なものだけでなく、評価や認知も含みます」「町内会とか」「そう!わかっているじ..
衿 at 2013-12-26 20:15
不愉快な本の続編
なかなかおもしろかった。絲山さん小ヒット。…男子一人称で語られる。
新潟、が主な舞台で出てくる。2年だけだったが生活したことがある私には、「赤道」(あかみち、とよむ)など、そこにいた人しか知りえない“地名たち”を懐かしく思った。
衿 at 2011-11-15 20:00
末裔
絲山さんの作品は、何かしら感じるものがあるのだが、他の文庫本上下の間(夢中になっていた)に読んだせいもあってか、うまく響かなかった。
衿 at 2011-07-25 20:00
妻の超然
絲山さんは、男っぽいところがいい。さっぱりしている。
3作のうち、私は2作目がよかった(「下戸の超然」)。そんな女やめとけ、って感じ。
阪神ファンですね、絲山さん。ますます合うなぁ。
【結果から言って首の腫瘍は小さな雨雲のようなものだった。一時的に激しい雨を降らせるとしても、やり過ごすという方法もあったのだ。
だがおまえは確かめずにはいられなかった。
おまえは、いつ..
衿 at 2011-02-04 21:00
きみと澄むこと
この連作に、劇団ひとりを重ねてしまうのは私だけかな…。
まあまあ楽しめましたが。
唯野未歩子は、それまで現代小説家の作品を一切読まなかった私が全作品おさえている3人のうちのひとりだ。あとは、芥川賞作家の吉田修一と絲山秋子。いずれも私より年下。唯野~は一番若い。
衿 at 2011-01-28 20:00
絲的サバイバル
イラスト者のカットがぴったり。雑誌に連載していた「キャンプ」の本。
【ずっと昔、ある人から「おまえは遊牧民だ」と言われたことがある。転勤が多くて、それを喜んでいたからだろう。会社を辞めたあとも、2年も同じ街に住んでいると違う生活がしたくてたまらなくなって、引越ししていた。~知らない街の新しい家で最初に寝る晩がなによりも嬉しい。】
衿 at 2009-05-27 08:22
北緯14度
絲山さんのエッセイ。フランス語圏セネガルに2カ月滞在の様子を、絲山さんらしく綴る。
【タバコを吸っていると、ガキがまた大勢金をせびりに来る。私は無視する。~こんなところで小銭を1つでも出したら、ガキの数が倍増することは必至だ。しかしムッシュ○○はそれを喜んでいるのだ。ガキとフランス語が喋れることを。自分が何十年も前に慶応仏文科を出て、今それが役に立っていることを。ア..
衿 at 2009-01-08 20:00
ばかもの
絲山さん、これはまるでポルノ小説のような始まりでした。
でも読み終えると、違いました。また一歩、上にいってます。
これから読む人は ↓ けして読まないで。
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【ネユキのメールを、差し出された一枚の清潔なハンカチのようだと思った。それを受け取って畳んでポケットに仕舞う、そんなポケットが今の俺にあるのだろうか。いつかネユキと再会して、洗って..
衿 at 2008-11-30 15:00
ラジ&ピース
妹に関するあたりの文章がよい。
“人間は孤独ではない” ということが言いたかったこと?
著者の会社員時代の赴任経験がまた反映されていた。
現代作家において、絲山秋子と吉田修一だけは全作品なんとなく追っている私。
衿 at 2008-08-30 20:00
ダーティ・ワーク
このところ長嶋有氏の本ばかり続いていたので、冒頭部分ですぐ「やっぱり絲山さんは文章に歯切れよいリズムがあるわ。」と感じた。
全体を通しての特記事項はない一冊です・笑。
短編集のようで、微妙に連作になっています。これ、吉田修一と気のせいかよく似ている?
【「おお。よかったな。俺でよければいつでも頼ってくれよ。役にたつかどうか自信ないけどな。
なんかあったら..
衿 at 2007-06-17 20:00
エスケイプ/アブセント
絲山さんのはかかさず読んできたので一応。
特に印象に残る作品ではない。
世の中にはこう長い間連絡をとらない家族がいるものなのか、と思った。小説ですが。
後半であっと驚く真実があり。
妙に調子がいい短い文章の羅列にリズムを感じることも。
【てくてくと歩いているとき、おれはいつも思い出す、昔NHKで見た、狂ったペンギンのことを。~】
のエピソードはちょ..
衿 at 2007-03-03 06:30