SSブログ

神と黒蟹県 [よんでみました]

神と黒蟹県

神と黒蟹県

  • 作者: 絲山 秋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/11/13
  • メディア: 単行本

『黒蟹県』は著者が架空で作った地名です。
読み始めてすぐにこの本を参照したのでは、と。想像力のある、こういう作業が好きな方には永遠に広がる楽しい世界のように思えます。
帯には『まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集』。
絲山さんを読むのは久しぶり。独特な空間ですが、心地よさがあります。

【(略)これがスマホだったらまだ、同じ水槽で泳いでいる別の種類の魚くらいの気持ちになれるけれど、運転席で本を開かれるとシャッターを閉められたように感じてしまう。】

家や家族を持たぬ者にとって、転勤は最高の楽しみだ。(略)ウマの合わない顧客も存在していない。からっぽだ。しがらみだけがリセットされ、まったく新しい環境に住まうことになる~。(略)蓄積がないということはこんなにも心が楽になるものなのだろうか。】
著者は会社員時代、転勤経験があったな。
私も「住めば都」体質なので賛同する。

【草木がまったくない裸地から鬱蒼とした森林が形成されるまで、植生が変化していくことを遷移という。】
知らなかった。この言葉。

【かれは内職でミシンを踏む母の背中を見るのが好きだった。縫い終わりに糸を長く引き出してぷつんと握り鋏で切る。】
ここでは電動ミシンだったが、足踏みミシンを使う私の母の姿を想い出した。握りバサミ、これは「半死半生語」ではない?(※NHK『今夜も生でさだまさし』)