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海恋紀行 [森まゆみさん]

海恋紀行 (わたしの旅ブックス)

海恋紀行 (わたしの旅ブックス)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2021/08/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

森さん、続く。このシリーズは、装丁からわかるようにもう4冊目ですね。
失礼ながら、こちらはささーっと読みました。
これまでの長い作家活動の中で、さまざまな媒体に発表した海に関する随筆などを再収録。2003年あたりから~と比較的、昔(?)のものも。海近くの北から南まで~。

奄美大島編では、田中一村の名もあったり、我が両親の里である紀州への旅も。私も懐かしく思い出しました《父、干支ひと回り前の2009年の帰郷がさいごとなった》。

しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために [森まゆみさん]

しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために (インターナショナル新書)

しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために (インターナショナル新書)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2021/08/06
  • メディア: 新書

だいぶ前に刊行を知り、借りると決めて(すみません!)待っていたのですが、一向に地元の図書館検索に出てこず(都会とは違う・涙)。紙に書く「リクエスト」は極力控えているのですが(財政難もわかるので…)、新書ですし買ってもらおうと予約してようやく~。
この方の本は高価でない限り、全国どこでもすぐさま蔵書して欲しいです。

母通院の待合室など、身につかない場所で読み始めたのもあり、おしまいまで時間がかかってしまいました。ある意味、今までの森さんの人生を追った本。付箋は大量。これはもう持っていた方がよい部類でした。

育児をしながら地域雑誌を仲間と作り、自分の思いに反した方へなびくことなく、物書きとなっていく。1954年生まれ、60代後半となり、人生の残りを感じつつ自らのペースで後悔なく歩んでいる(突き進むというより地に足をつけて…)。その心向きに私はいつも正されます。

目の病気をして眩しいのが辛いので、昼間は照明をつけません。私はこういう縮小生活を楽しんでいます。~一年の三分の一くらいは旅。~思い立ったら足の向くままなので、宿は、当日スマホか電話で予約します。】
縮小生活、いい言葉です☆

【フリーはたしかに安定していないし~(略)・私は最近、国民年金をもらい始めましたが、月に直すと6万ちょっとで、そこから介護保険料を引かれます。これではせいぜい食費ちょぼちょぼ。まあ、それでもいいか。嫌なことは嫌だ、心に染まぬことはしたくない、そう思うだけです。】
森さん、国民年金、もらえる時期に入ってさっそく受給を始めたご様子ですね。←ここでの本題ではないですが・笑。

若き日、自分の結婚式にその時所属していた社の上司を呼ぶのは本意でなかったので、その前に退職を選ぶ。それも森さんらしい。「人」のチョイスはそれぞれ、帯に巻かれることはありません。

大手出版社のアルバイト経験では、社員と非正規雇用の差を実感。差別の本質をわかるためには差別される立場に置かれるのが一番と。

【「俺が育ててやった」という編集者にロクなのはいません。】
このバシッと感がいい。

谷中での学習会では、谷川俊太郎さんのほか、今では故人の岸田衿子さん、石垣りんさん、茨木のり子さんとの交流も。うらやましい交友関係は、既刊でも知るところ。

【私の場合、調べすぎ盛り込みすぎて、原稿が硬くなる傾向があり、気をつけて、物によっては、ふわっと書く、がっちり書く、いろんなスタイルを試しています。】
徹底的に資料にあたる性格のよう、それが納得のいく作品として形になっている。大学で教えることもありましたが、最終的には降りました。書評も各紙で担当しましたが、いい加減に読んで述べることはできないため、積み上げられた本の山~のお仕事からはもう離れています(目の病もあり)。

【なぜ本を書いているかというと、知らないことを調べたり、知識を得、わかることが好きだからです。】

【少産少死になると生まれた子どもは大事になり過保護になりがちです。】
そうか、これには思い当たらなかった。たしかに。…森さんは子どもは多くいてもその中でなんとか育っていく、というお考えです。ご自身は女、男、男と3人のお母さん。刊行時点ではお孫さんはいないそうですが(お嬢さんは既婚、お子さん全員30代以上)、誰の子どもというのではなく、地域のみなで子どもたちをみていけばいいと。今の世の中は結婚するもしないも自由、子どもを持たないのも人それぞれ。養子という選択や、姪や甥の成長を共に見守り~でよい時代だと。

家を買うか、借りるか、では、
【~家族の人数は変わるので、それに応じた縮小拡大もしやすいし、賃貸のほうがいいのではないかと思います。気分を変えるのが好きな人、引っ越しが苦にならない人は賃貸がいいでしょう。】
では私はこっちかな・笑。

【~社会に出てからいままで嫌なこと、自分がおかしいと思うことは何一つせずに40年以上過ごしてこれました。いままでの人生を誰かと取り替えたいと思ったことはありせん。】

コロナ禍で《2021年8月刊行時》。
【私のほうも予定された会合や講演はすべてキャンセル、新規依頼もない。この際、空いた時間に家の資料の整理をし、次の仕事の段取りを考える。連載が終わって本になっていないものを完成させる。~災い転じて福となすのは得意なほうです。】 
【3.11や原発事故で人生観が変わったという人もいましたが、私は昔から変わっていません。集住は避け、国土に分散して住むほうがいい。通勤ラッシュはやめ、社員を信頼するテレワーク、在宅勤務を広めたほうがいい。9万人がスタジアムに集まるような巨大イベントはやらないほうがいい。~利益でなく、ゆったりと、お互い様で助け合って暮らせる地域をつくりたい。都市の密度を上げるビル建設はやめてほしい。経済の動きがスローになれば、地球はそれだけ長持ちするはず。~東京でも車が減り、空気が良くなった気がしませんか。】

あとがきより。
【私は元気なうちは働いていたい。でも病気になって寝ついたら、早くフェイドアウトしたい。延命治療はしてくれるなと子ども三人にはいってあります。】
今は制限がかかっていますが「聞き書き」も重要なお仕事。高齢者からお話を伺う=急がねばならぬ事情もある。「元気なうちは働く」は、この人の場合、自分のためでなく、あとの時代に残される者たちへの貴重なメッセージを…と映る。もちろん、根っから探求心の塊であるご自身だからこそ~だが。頭が下がる。

そうそう、この本の半ばで「12年の結婚をほどきました」と当時を振り返って書いてありました。「ほどきました」っていい表現ですね。お子さんはお父さんと現在も交流しているようですし。…30数年前は、家事は女性がやって当たり前、夫がちょっと手伝えば周囲から褒められたという頃。
《余談:本来は仕事を続けたかった私も、出産を控えたとなるとなんとなく退職に流されていったことを思い出す。今は違う時代でしょう。》
現在は夫とか妻でなく、家のことはやれる方がやるというふうに。まだまだ?でしょうけれど。

森さんにはもうひとふんばり、世間に森さんらしいカツを入れていって欲しいと思います♪

路上のポルトレー憶いだす人びと [森まゆみさん]

路上のポルトレ

路上のポルトレ

  • 作者: 森まゆみ
  • 出版社/メーカー: 羽鳥書店
  • 発売日: 2020/12/04
  • メディア: 単行本

地域雑誌『谷中・根津・千駄木』編集人から出発した著者が、出会った人びとを回想するエッセイ。作家、思想家、詩人、そして市井にいきる人…(帯より)。
登場する98%の方はもうこの世にいない。

【長年、町の雑誌を作ってよかったことは、死ぬのがそう怖くなくなったことである。それまで人の死に遭うことが少なかったが、土地の古い方たちに話を聞くようになって、死はうんと身近になった。】
【~ともあれ、それを自分だけのものにするのは惜しい。~この世で見たこと、感じたこと、会った人のことを次の世代に手渡したい。文化とは記憶の継承~(略)。】
ほんと、この本にあるエピソードをしまっておくのはもったいない。こうして読まれていかなければ♪

中村哲さんと。
【わたしが「なぜ危険なアフガン国境に行くんですか」と聞くと、中村さんは「ほかに誰も行かないから」と答えた。彼をカリスマ化することなく、信念を曲げない生き方を、細く長く受け継いでいきたい。】
岸田衿子さん、矢川澄子さん(翻訳たくさん・私が好きなのはこれ)もあった。聞き伝えの中には、「五月の風をゼリーにして持ってきてくれ」という病床の立原道造のエピソードも。

森さんは30歳で仲間と創刊し、自らの足で雑誌を各所に置いてもらった。しばらくするとシングルで3人の子どもを育てるようになる。この本を読むと、ずっと妻であったなら会話することはなかっただろう(取材外の飲む席に行けなかったよね)出会いがたくさん詰め込まれている、と私は思った。ひとりだったことで専念できた&生活のために文章を書き続けた→それがすべて今の森さんとなっているのだとつくづく。

そうそうたる文化人ばかりの中、私が一番心に残ったのは「解剖坂のKさん」。市井の人。なぜだろう。(※「解剖坂」は某医大の解剖学教室の真裏なため)
有名でない、いわゆる業績などない普通の人々の中にももちろん、背筋のまっすぐのびた人はそこここに居るのである。

本とあるく旅 [森まゆみさん]

本とあるく旅 (わたしの旅ブックス)

本とあるく旅 (わたしの旅ブックス)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2020/08/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

【地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を編集していた26年間、いちばん多い問い合わせは詩人・立原道造のお墓はどこにあるんですか、だった。~なんとファンが多いのだろう。】
これにはびっくり。人気あるのだなぁ。もちろんヒヤシンスハウスのことも書いてあった。引っ越す前にここに行かなかったことは悔いが残っている。いつかきっと☆(さいたま市の別所沼公園内

三島由紀夫は私が中学くらいのときに超スター作家で、はじから読んだ。】
森さんもそこを通過したのか~。
…山田風太郎氏が亡くなったあと、同氏に関する本を出す。
亡くなった作家が忘れられないためには没後すぐ、騒がないといけないからである。】
このような第三者の行動があって後世に生き残ってきた文学者はたくさんいるし、その動きがなかったばっかりに埋もれた人々もいる、ということである。この本では再三、そのことが書かれていた。

【京都に行くなら京都の本を、沖縄に行くなら沖縄の本を、現地で読むとすっと身体に入る。でもミスマッチも時々はいい。~フランスのルマンで『コンビニ人間』を読んだり、上海でラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』を読んだり、モロッコで時代劇のチャンバラを読んだりするのもいい。】
うん、ミスマッチいい。
この人の本を読むと無性に旅がしたくなる

結婚というのは凄まじい異文化コミュニケーションである。】
たくさん読んできたから、著者の元夫(北海道出身)に関する文章は熟知している。
そうだよなー、異文化だよな。寄り添って、折り合って、あまりいい言葉ではないが妥協していくのが結婚生活なのだろうなー。
全然関係ないが、コミカルといえど『逃げ恥~』もそういうことを描いているのだろうね(本日スペシャルを録画で観たばかり)。

会いにゆく旅 [森まゆみさん]

会いにゆく旅 (わたしの旅ブックス)

会いにゆく旅 (わたしの旅ブックス)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2020/01/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

5:20、私は温泉にいた。朝がしらんでくるのを寝そべって浸かりながら見た。この本を読み終え、無性に行きたくなったのだ(Ayuは留守番)。
寒の戻り。それ以降、きょうはずっと雪が降っている。

同シリーズで、また刊行。うれしい限り。雑誌を中心にさまざまな媒体に発表した紀行文をまとめる。

森さんは、すべて原稿は手で書くという。推敲、手書きは大変でないのかな。
旅先で、一年は待たなければならない高級万年筆を注文された。
【パソコンは文明、万年筆は文化。】

【いま、日本の食の自給率は39%。おそろしい数字である。いま農民は300数十万人。人口の3%しかいない。漁民にいたっては20万人。…】
中国製は今後、コロナの影響で頼れなくなるだろう。この機会に、食も各製品も極力国産に努めたらいいのでは。高くなるかもしれないが、質はきっとよい。国内だけでまかなわなければならない非常事態がある、ということである。

【1996年に身近な文化財を登録する制度が国にでき、有形文化財の温泉宿は増えている。】
知らなかった。
泊まれる重要文化財、登録文化財は多く、日本文化を守るには客となるのが一番のようだ、とのこと。
【山は暮れるのが早い。まずは光が差し込む風呂につかることにする。】
あー、朝風呂、昼風呂はぜいたくそのもの~~。

【鳥取へサンライズ出雲という夜行列車で行くことに決めた。~個室だぞ。鏡付きだ。スリッパも寝巻きもある。~と子どもっぽくうきうきして、旅立ちのビール缶で窓に映る自分と乾杯した。】
ビールが美味しいと思えたらこれはたまらないのだろうな。我が家族がこの列車で旅したのはもう20年くらい前のこと

【神戸の地震の時はまだ3人の幼い子を抱え、何も手伝えなかった。今度こそ、と思った。】
3.11以降、森さんの足が向かうのは東北ばかりとなる。

森さんは、歴史的建造物の保存活動にも取り組んでいる。だから、オリンピック開催で失われていくモノを案じ、一貫して反対してきた。東京オリンピックやら何やらで資材も職人も廻ってこない、という地方の現状もある。新しい方ばかりに向かうのでなく、失ってはならない古いものの修繕が優先なのだ、と感じた。

上野駅が67階建てのビルになる構想があったことは初耳だった。その後、バブルの破綻と共に立ち消えとなったそう。それでよかった。それでなくても以前の上野駅の姿はもうない。私でさえも懐かしい。

【あと5年したら、家を始末して、お金を懐に、いや普通預金に入れたまま死ぬまで旅をしたい。旅先で死ねたら最高だ。いまの私の心配は死ぬことよりも、「死ねなかったらどうしよう」ということなのだ。子どもたちは3人とも「お母さんの稼いだお金なんだから使い果たして死んでくれ」と言っている。】
ご自分のいずれ辿る介護生活を憂いてか。医学の発展を、文明の発達と合わせ、あまり望まれていない派なのだと推測。わかる気がする。

用事のない旅 [森まゆみさん]

用事のない旅 (わたしの旅ブックス)

用事のない旅 (わたしの旅ブックス)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2019/01/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

《カテゴリーに「森まゆみさん」作りました》
森さんは、やっぱりステキです。
【事前に観光ガイドを読むことはまずない。驚きがなくなるからだ。人のすすめる定番の見所、お店にそのまま行くほど素直じゃないあくまで自分の勘に頼り、この道の先に面白そうなものがあるぞ、構えからしてこの店はいけそうだ、と考える。それではずれたためしはない。】

【私は権力的な場所は苦手なので、まず、お城は行かない。エライ人がゼイタクしたあとなんて見たくもない。】
あー、わかる。とっても。私自身も、そういう意味では十分ひねくれている。なんでもたいてい人気のない方にカタを持ちたくなる。
【人間はどうして著名作家のものや、国宝や重文といった権威づけにこだわるのだろう。私は人が誉めるベストセラーや賞をとった小説など、天邪鬼で読みたくなくなる方である。~むしろ反発してしまう。どうもいけない。これも反権力主義というスノビズムなのだろう。】

【観光のために、目玉施設をつくったり、立派な宿泊施設をととのえたりすることはない。交通網を整えたり、標識を整備することだって二の次である。できるだけ管理されない、自由で親切で楽しい住民を育てること。】
最近は、大阪(そして人々)に惹かれている森さん。…2020東京オリンピックが決まったことで、失われていく古き良き建物等に思いをよせ、運動もしている。新しく美しくなることばかりがもてはやされてはいけない。壊してしまえば、それは二度と復活しないのだ。
新国立競技場を作るために、神宮外苑の樹木は1500本以上切られたらしい…。)

【(宿は)素朴で静かで放っといてくれること。余分な装飾やおためごかしのサーヴィスがないこと。それが一番なのである。(略)こういう女一人の旅は少し前まで、いやがられたものだが、最近は「お一人様」という言葉とともに認知されたらしい。】
【間のびしにいくのである。東京におけるもろもろのこと、ひっきりなしの電話、ファックス、メール、高速道路、高層ビル、うるさいアナウンス、車の音、そういうものから逃れたい。別にゼイタクな宿でなくてよい。静かで聞こえるのは鳥や虫の声、渓流の音、木々を渡る風の音。建物はコンクリのビルでなく木造、欲しいのは土地の言葉と土地の料理。】

1954年生まれ。
【22歳のとき、イタリアに行って以来、20年間パスポートを持たず、海外へは行かなかった。そんなお金もヒマもなかった。43歳になって、再び10年パスポートをとった。旅は四十雀(しじゅうから)。以来、40回以上、海外に出かけた。】
ほとんどお仕事では、と思う。森さん、衣類は貰ったものばかり、と以前にあった。価値観はそこにない。もっと大切なことがある
女一人旅ならドイツ鉄道旅行。たいへん町がきれいだ。治安もいい。片言でも英語が通じる。親切な人が多い。そしてバスや列車は時間どおりに来る。これはアジアでは考えられないことだ。(略)】

【(子規の敏感な耳は)脊椎カリエスの病身ゆえ身動きできず、視覚が限られるために、こんなに聴覚が鋭くなったのだと私は思った。】
【書くこと、句作は好きだったが、学校や試験は大嫌い。みごとに不登校児になって、いまの東大を中退。というか早くに喀血した子規は、自分の余命を悟り、学校なんか行ってる場合じゃない、と飛び出したのだろう。しかし三十代半ばで亡くなるまで、俳句と和歌の革新という二大事業をやりとげた。】

イタリア文学者・須賀敦子さんのことも。
【~どこかに関西のお嬢さんの匂いがあった。怖いもの知らずで会話のはしばしに諧謔味がある。】
信濃追分を愛した叙情詩人、立原道造のことも。『夢みたものは~(詩の全紹介)』享年24歳だものな…。

あとがきが、またよい。
【生きることはつらい。毎日、原稿をかいたり、人の前でしゃべったり、それでどうにか世渡りをしている。世の中はもめ事だらけだ。地球もあとどのくらいもつのだろう。子どもは思い通りには育たない。(略)ある百姓のおじさんはいった。「失敗のない人生は失敗でごじゃります」 その時、霧が晴れるような気持ちになった。】
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昭和の親が教えてくれたこと [森まゆみさん]

昭和の親が教えてくれたこと

昭和の親が教えてくれたこと

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2016/06
  • メディア: 単行本

永遠のバイブル、森まゆみさん。1954年東京生まれ。早稲田大学政経学部、東京大学新聞研究所修了。お子さんは3人。もうそれぞれの道に進んでいる。

【30年以上、たくさんの聞き書きをして思うのは、男の人は生まれた年が1つ2つ違うだけで、どんなに運命が変わるかということです。父は「俺もあと一年早く生まれていたら持っていかれて特攻隊だ」と。これはいつもいう言葉で、父の反戦の根拠でした。(※昭和2年生まれ)】
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抱きしめる、東京 [森まゆみさん]

抱きしめる、東京―町とわたし (講談社文庫)

抱きしめる、東京―町とわたし (講談社文庫)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 文庫

森まゆみさん作のエッセイ系なのに、読んでいなかったもの。幼い頃からの東京いろいろを書いているが、自身の歩んできた道をも綴っている。元ご主人との学生時代の出会い、初めての子どもを授かった時、タウン誌の仕事を始めた頃など。
もちろん、すべてを書いてはいないだろうが。相手への深い配慮がわかる。

【とうとう夫は1991年(平成3年)の夏に家を離れた。そして私は子供3人と4人世帯の家長になった。町にのめり込んで家庭を壊した。そのことが長く心を責めた。しかし落ち込んでばかりもいられなかった。“谷根千”の雑誌からの給料ではとうてい生活できないので、私は外の仕事をそう断れなくなった。その夏から翌年の春まで、私はほとんど布団に寝た覚えがない。冬中はコタツで原稿を書き、明け方疲れると横になって1、2時間ほど仮眠し、また起きて子供を学校に送った。~】
以前の著作で、北海道出身だった夫の実家は、冬暮らしが長いからかとても家の中がきれいで、自分は真似できないと思った…というようなことを書かれていた。
育ってきた環境の違い、は大きい。夫婦というのは、相手を思いやり、折り合って、寛容に過ごせるかどうかなのだと思う。
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明るい原田病日記 [森まゆみさん]

明るい原田病日記―私の体の中で内戦が起こった

明るい原田病日記―私の体の中で内戦が起こった

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2010/09/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

2007年春に、作家森まゆみさんは100万人に5人ともいわれる「原田病」にかかった。両目の症状が顕著だが、全身症状もあるそうだ。私は、この新刊を読み、最後あとがきには「もう完治しました」という言葉を聞けるものだろうと思って読んでいたが、治療で一部は回復しているものの、付き合っていく病のようだ。まれな存在の方なので、どうか出来るだけ今後支障のないようにと祈るばかり。
今までおひとりで3人もの子育てをし、雑誌も続け、頻繁な刊行もしていたのだものねー、これからは選りすぐって活動され、でもゆっくりでも書いていってください、という気持ち。

この本は、明るい!?闘病日記と銘打っているが、最近の森さんの生活そのものをうつしているエッセイであり、いつも通り興味深い。
【(歴史的建造物の保存活動も行なっている森さん、新しい建物を建てないと経済発展に寄与しないではないかの質問に)日本は十分発展していてこれ以上、開発する必要はない、環境を守り地球をできるだけ長持ちさせる、文化遺産を守り、便利より楽しい気持ちいい生活をした方が良い。】
【(眼の不良で仕事の規制ができ)家にいるのがこんなに楽しいとは。いろんなことの整理がついてきて、次の仕事が見えて来る。心はかつてなく澄みわたっている。まだやる気は失せていないが、そう貪欲でもない。】
少なくとも、自分の中でやるべきことの優先順位がはっきりしてきた。須賀敦子さんではないが、その為に生まれて来たと思える生き方をしたい。】
【(お父さまを自身の闘病中に亡くされた)すでに父は何も食べていない。胸に穴をあけてそこから栄養を入れましょうかと病院はいったけれど、生命の質を伴わない延命治療はしないことに家族で決めた。ごめんね、おとうさん。勝手に決めて。父が食べていないと思うと、おいしいものを食べる気になれない。ご飯を炊き、卵をかけてすます。】

母と一箱古本市をした、谷中ぎんざ入り口の「夕焼けだんだん」という場所、命名者は森さんだったことをこの文中から知る。千駄木は地元であるし、「往来堂書店」さんに立ち寄ったくだりもありました。
往来堂書店さんには、森さんの本コーナーも入り口付近にあり。そのそばに、母のブックカバーが並べられているのはうれしいな
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プライド・オブ・プレイス [森まゆみさん]

プライド・オブ・プレイス

プライド・オブ・プレイス

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 単行本

《今ここに生きる自分をみつめ、未来に橋渡しをする。「楽しく暮らす」とは、そういうことではないか…森まゆみの第4エッセイ集26編》とある。
やっぱり、森まゆみさんの文章はいい。暮らし方も子どもたちの育て方も自然体でいい。それにつきる。
この書は、ご自身まわりのことより、仕事の中での出会いを中心に綴っている。私は、森さんの著作に関しては普段の実生活を書いたエッセイに一番興味があるのだが(申し訳ないが作家研究等より)、それでも大満足の一冊だった。
森さんの文章はいつも、はじめの2ページ目あたりを読んだだけで幸せになれる。たとえ気の重い一日のはじまりだったとしても、さわやかな風を吹き込み澱んだ心を一掃してくれるのです。
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貧楽暮らし [森まゆみさん]

貧楽暮らし (集英社文庫)

貧楽暮らし (集英社文庫)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/06/25
  • メディア: 文庫

森まゆみさんはやっぱり最高。私には永遠にバイブルです。
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ベスト・オブ・谷根千 町のアーカイヴス [森まゆみさん]

ベスト・オブ・谷根千―町のアーカイヴス

ベスト・オブ・谷根千―町のアーカイヴス

  • 作者: 谷根千工房
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本

『谷根千』(谷中・根津・千駄木)、とうとう終わりとなりますね。
3人の編集人のうち、森まゆみさんは私の中で永遠の心の師のひとり、です。これからも本はまだまだ書いてくださるでしょう。

【1984年、20代の3人の女が、なぜ無謀にも地域で雑誌を出そうなどと考えたのか。
~金もない、暇もない、子供はいる、亭主は構ってくれない、地域と家庭に鎖でつながれたプロレタリアートの女たちの青春の爆発だったのではないか。~テレビもなく、クーラーもなく、車もなく、化粧もせず、服も買わず、20年パスポートも持っていなかったけれど、私たちは貧しいと思ったこともなかった。貧乏でも楽しかった。】
【今、背中にいた長男は私をおぶえるくらい成長し、配達も手伝ってくれる。そんなに長くやってきたんだなぁ、とつくづく思う。】
山崎範子さんのおわりの言葉がまた嬉しい。
【また森(まゆみ氏)の著作のなかで甦りそうな文章やテーマはあえて外してある。】

森さんは、早くから!?自らひとりで子育て、の道を選んでいたが、あとのおふたりともが50代を待たずしてつれあいを亡くされている現実にはあらためて考えるものがある。
そのようなお疲れもあったし、もう地域での役割は済んだかな(そろそろネットの時代でもあり…)というところなのだろう。書くことは書き尽くされたのだと思う。
ほんとうにおつかれさまでした。
でもあの冊子のバックナンバーは残るし、いつまでも私はお手本にしたいです。こういうの、私の夢です。
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