明るい原田病日記 [森まゆみさん]
2007年春に、作家森まゆみさんは100万人に5人ともいわれる「原田病」にかかった。両目の症状が顕著だが、全身症状もあるそうだ。私は、この新刊を読み、最後あとがきには「もう完治しました」という言葉を聞けるものだろうと思って読んでいたが、治療で一部は回復しているものの、付き合っていく病のようだ。まれな存在の方なので、どうか出来るだけ今後支障のないようにと祈るばかり。
今までおひとりで3人もの子育てをし、雑誌も続け、頻繁な刊行もしていたのだものねー、これからは選りすぐって活動され、でもゆっくりでも書いていってください、という気持ち。
この本は、明るい!?闘病日記と銘打っているが、最近の森さんの生活そのものをうつしているエッセイであり、いつも通り興味深い。
【(歴史的建造物の保存活動も行なっている森さん、新しい建物を建てないと経済発展に寄与しないではないかの質問に)日本は十分発展していてこれ以上、開発する必要はない、環境を守り地球をできるだけ長持ちさせる、文化遺産を守り、便利より楽しい気持ちいい生活をした方が良い。】
【(眼の不良で仕事の規制ができ)家にいるのがこんなに楽しいとは。いろんなことの整理がついてきて、次の仕事が見えて来る。心はかつてなく澄みわたっている。まだやる気は失せていないが、そう貪欲でもない。】
【少なくとも、自分の中でやるべきことの優先順位がはっきりしてきた。須賀敦子さんではないが、その為に生まれて来たと思える生き方をしたい。】
【(お父さまを自身の闘病中に亡くされた)すでに父は何も食べていない。胸に穴をあけてそこから栄養を入れましょうかと病院はいったけれど、生命の質を伴わない延命治療はしないことに家族で決めた。ごめんね、おとうさん。勝手に決めて。父が食べていないと思うと、おいしいものを食べる気になれない。ご飯を炊き、卵をかけてすます。】
母と一箱古本市をした、谷中ぎんざ入り口の「夕焼けだんだん」という場所、命名者は森さんだったことをこの文中から知る。千駄木は地元であるし、「往来堂書店」さんに立ち寄ったくだりもありました。
往来堂書店さんには、森さんの本コーナーも入り口付近にあり。そのそばに、母のブックカバーが並べられているのはうれしいな。
2010-12-05 17:00
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