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北緯14度 [よんでみました]

北緯14度

北緯14度

  • 作者: 絲山 秋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/21
  • メディア: 単行本

絲山さんのエッセイ。フランス語圏セネガルに2カ月滞在の様子を、絲山さんらしく綴る。

【タバコを吸っていると、ガキがまた大勢金をせびりに来る。私は無視する。~こんなところで小銭を1つでも出したら、ガキの数が倍増することは必至だ。しかしムッシュ○○はそれを喜んでいるのだ。ガキとフランス語が喋れることを。自分が何十年も前に慶応仏文科を出て、今それが役に立っていることを。アホか。
なんでこんな危なっかしい人についてきてもらったのかわからない。どっちが編集者なんだよ。】 
あくまで絲山調なのが心地よい。

【(憧れの太鼓演奏者ドゥドゥと会って)「私はあなたと違って小さな才能しか持たない作家ですが、それでも書いているときに神が力を与えてくれることを感じることがあるのです。あなたもそうですか?」
-(ドゥドゥ)「本当にそうです。太鼓は、死んだものでできています。皮もそうだし、木もそう、でもこうやって音が出る。それは神様のおかげです。」
私が言いたかったことは、たったそれだけだった。何十年もかかって、遠くまで来て。でも、それで十分だった。
~太鼓と語り部がいたから、この国は文字をもたなかったのではないかと思う。今だって、文字なんかより直接心に響く。】

【これまでは、最長で1カ月しか外国に滞在したことがなかったのですが、なるほど2カ月はこういう感じかと思います。】
異国は、できることなら2カ月過ごすと、何か見えてくるのかもしれない。
比較には適さない話なのだが:私の5泊7日ロンドン滞在中、せっかく来ているのだから絶対避けようと思っていたのだが、和食(持ち帰り寿司やラーメンなど)をとってしまった。パン食が続くのは耐えられなかったのである。
と、この話を元ツアコンの友人にしたら、「もう数日滞在していればそれも大丈夫になるのよ(ずっと現地食でも)。」と言われた。
そうなのかもしれない。ちょっとの旅行では、ほんと、覗いたに過ぎないのだ。喉元過ぎればなれていくのだろう。

【どうもまだ、1万円と1万シェーファーを混同しているフシがあって、土産など買ったら実は2500円の1万シェーファーなんて飛ぶようになくなってしまうのだ。】
そうそう、お札の感覚は間違えそうになります。

【“セネガル時間は、日本時間に3時間足して昼夜をひっくり返すんだ” と教えてくれました。私は引き算していたので、眼から鱗でした。】
私も目からウロコ~。

元々フランス語の心得はあった著者ですが、ジョーダンめいた会話までこなしていた様子は(徐々に)うらやましい限りでした。
小説家は、やっぱり「小説」が人気で、エッセイはほっとかれる傾向にありますが、なかなか面白かったです。
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