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癒しのセクシー・トリップ-わたしは車イスの私が好き! [安積遊歩さん]

癒しのセクシー・トリップ―わたしは車イスの私が好き!

癒しのセクシー・トリップ―わたしは車イスの私が好き!

  • 作者: 安積 遊歩
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社
  • 発売日: 1993/11/20
  • メディア: 単行本

読んでよかった。やはり、これがこの人を端的にあらわしている最初の書、と思われる。
どれもそうだが、あけすけに書いている(何十時間もかけて話したものを、編集者が一つの原稿にまとめ、安積さんがそれに何度も何度も手を入れてできあがった、とあり)。

【~しょっちゅう医師の回診があった。大先生といわれる人がインターンをおおぜい引き連れて、みんなぞろぞろと見てまわるのだ。~とつぜん嵐のようにやってきて、有無を言わさずパッパッパとパジャマをむしり取ってはだかにし、大先生が私をさしながら「ああだ、こうだ」とインターンに説明する。それがもう、くり返し、くり返しある。】
事前に許可をとることなんて、まず一度もなかったという。

【日本で、妊娠したかと思って産婦人科に行ったことがある。そのとき、なんの検査もせずに「あんたみたいな人が子どもなんて産めるはずがない」といい放った医者の、ものすごい侮辱的なまなざしに、私はショックでことばを失った。~障害が遺伝するから、子どもは産むな、と言われたこともある。
このことを友人に話したら、彼女はもうれつに怒った。障害が遺伝しようとしまいと、子どもを産むかどうかは両親が決めることで、医者はその決定に全面的に協力する立場にあるだけなんだ、と。】
その通りでしょう(オーストラリアはその点、行き届いていたとあった)。

【「人の迷惑にならないように生きなさい」と施設で徹底的にたたきこまれていた。~でもなかまたちはとうぜんのことのように私に言った。~おかげで私は「人に頼めばいいんだ」と、すぐに発想の転換ができた。「助けて!」と言ってもいいんだということも。】

28歳の時、アメリカに障害者運動のリーダーとして半年、研修で留学するチャンスがあり、それによって、さらに視野が広がった。これが大きかった。
【(アメリカで)一人で電動車椅子にのって街を歩いていたら、なんと向こうから来た人が私に道を尋ねてきた。エッ、私に聞くの?すごい!こりゃ、初体験だ。日本でだったら、障害をもってる人が道を聞かれることなんて、まずない。たいていがチラチラ、ジロジロ見るか、目をそらせて無視するかのどちらかだ。
ストリート・ピープルにお金をねだられたときは、もっとびっくりした。日本人の障害をもった女の子に「10セントちょうだい」だって。すごい、すごい、なんて新鮮なことか!】
一人としておなじ生き方をしている人がいない、思いつきもしなかった世界がそこにあった。

書いているときりがないが、間違いなく革新的な一冊。もう20年も前の著作だが。
この本に触発され、安積さんの講演(たしか…)に出かけ、言葉を初めてかわし、その後パートナーとなった彼も(当時はかなり若かったわけだが)、それまでの彼女の人生を踏まえた上で、寄り添う道を選んだのは大きな勇気(愛)だと。
nice!(1)