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しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために [森まゆみさん]

しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために (インターナショナル新書)

しごと放浪記 自分の仕事を見つけたい人のために (インターナショナル新書)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2021/08/06
  • メディア: 新書

だいぶ前に刊行を知り、借りると決めて(すみません!)待っていたのですが、一向に地元の図書館検索に出てこず(都会とは違う・涙)。紙に書く「リクエスト」は極力控えているのですが(財政難もわかるので…)、新書ですし買ってもらおうと予約してようやく~。
この方の本は高価でない限り、全国どこでもすぐさま蔵書して欲しいです。

母通院の待合室など、身につかない場所で読み始めたのもあり、おしまいまで時間がかかってしまいました。ある意味、今までの森さんの人生を追った本。付箋は大量。これはもう持っていた方がよい部類でした。

育児をしながら地域雑誌を仲間と作り、自分の思いに反した方へなびくことなく、物書きとなっていく。1954年生まれ、60代後半となり、人生の残りを感じつつ自らのペースで後悔なく歩んでいる(突き進むというより地に足をつけて…)。その心向きに私はいつも正されます。

目の病気をして眩しいのが辛いので、昼間は照明をつけません。私はこういう縮小生活を楽しんでいます。~一年の三分の一くらいは旅。~思い立ったら足の向くままなので、宿は、当日スマホか電話で予約します。】
縮小生活、いい言葉です☆

【フリーはたしかに安定していないし~(略)・私は最近、国民年金をもらい始めましたが、月に直すと6万ちょっとで、そこから介護保険料を引かれます。これではせいぜい食費ちょぼちょぼ。まあ、それでもいいか。嫌なことは嫌だ、心に染まぬことはしたくない、そう思うだけです。】
森さん、国民年金、もらえる時期に入ってさっそく受給を始めたご様子ですね。←ここでの本題ではないですが・笑。

若き日、自分の結婚式にその時所属していた社の上司を呼ぶのは本意でなかったので、その前に退職を選ぶ。それも森さんらしい。「人」のチョイスはそれぞれ、帯に巻かれることはありません。

大手出版社のアルバイト経験では、社員と非正規雇用の差を実感。差別の本質をわかるためには差別される立場に置かれるのが一番と。

【「俺が育ててやった」という編集者にロクなのはいません。】
このバシッと感がいい。

谷中での学習会では、谷川俊太郎さんのほか、今では故人の岸田衿子さん、石垣りんさん、茨木のり子さんとの交流も。うらやましい交友関係は、既刊でも知るところ。

【私の場合、調べすぎ盛り込みすぎて、原稿が硬くなる傾向があり、気をつけて、物によっては、ふわっと書く、がっちり書く、いろんなスタイルを試しています。】
徹底的に資料にあたる性格のよう、それが納得のいく作品として形になっている。大学で教えることもありましたが、最終的には降りました。書評も各紙で担当しましたが、いい加減に読んで述べることはできないため、積み上げられた本の山~のお仕事からはもう離れています(目の病もあり)。

【なぜ本を書いているかというと、知らないことを調べたり、知識を得、わかることが好きだからです。】

【少産少死になると生まれた子どもは大事になり過保護になりがちです。】
そうか、これには思い当たらなかった。たしかに。…森さんは子どもは多くいてもその中でなんとか育っていく、というお考えです。ご自身は女、男、男と3人のお母さん。刊行時点ではお孫さんはいないそうですが(お嬢さんは既婚、お子さん全員30代以上)、誰の子どもというのではなく、地域のみなで子どもたちをみていけばいいと。今の世の中は結婚するもしないも自由、子どもを持たないのも人それぞれ。養子という選択や、姪や甥の成長を共に見守り~でよい時代だと。

家を買うか、借りるか、では、
【~家族の人数は変わるので、それに応じた縮小拡大もしやすいし、賃貸のほうがいいのではないかと思います。気分を変えるのが好きな人、引っ越しが苦にならない人は賃貸がいいでしょう。】
では私はこっちかな・笑。

【~社会に出てからいままで嫌なこと、自分がおかしいと思うことは何一つせずに40年以上過ごしてこれました。いままでの人生を誰かと取り替えたいと思ったことはありせん。】

コロナ禍で《2021年8月刊行時》。
【私のほうも予定された会合や講演はすべてキャンセル、新規依頼もない。この際、空いた時間に家の資料の整理をし、次の仕事の段取りを考える。連載が終わって本になっていないものを完成させる。~災い転じて福となすのは得意なほうです。】 
【3.11や原発事故で人生観が変わったという人もいましたが、私は昔から変わっていません。集住は避け、国土に分散して住むほうがいい。通勤ラッシュはやめ、社員を信頼するテレワーク、在宅勤務を広めたほうがいい。9万人がスタジアムに集まるような巨大イベントはやらないほうがいい。~利益でなく、ゆったりと、お互い様で助け合って暮らせる地域をつくりたい。都市の密度を上げるビル建設はやめてほしい。経済の動きがスローになれば、地球はそれだけ長持ちするはず。~東京でも車が減り、空気が良くなった気がしませんか。】

あとがきより。
【私は元気なうちは働いていたい。でも病気になって寝ついたら、早くフェイドアウトしたい。延命治療はしてくれるなと子ども三人にはいってあります。】
今は制限がかかっていますが「聞き書き」も重要なお仕事。高齢者からお話を伺う=急がねばならぬ事情もある。「元気なうちは働く」は、この人の場合、自分のためでなく、あとの時代に残される者たちへの貴重なメッセージを…と映る。もちろん、根っから探求心の塊であるご自身だからこそ~だが。頭が下がる。

そうそう、この本の半ばで「12年の結婚をほどきました」と当時を振り返って書いてありました。「ほどきました」っていい表現ですね。お子さんはお父さんと現在も交流しているようですし。…30数年前は、家事は女性がやって当たり前、夫がちょっと手伝えば周囲から褒められたという頃。
《余談:本来は仕事を続けたかった私も、出産を控えたとなるとなんとなく退職に流されていったことを思い出す。今は違う時代でしょう。》
現在は夫とか妻でなく、家のことはやれる方がやるというふうに。まだまだ?でしょうけれど。

森さんにはもうひとふんばり、世間に森さんらしいカツを入れていって欲しいと思います♪