俺と師匠とブルーボーイとストリッパー [よんでみました]
第13回新井賞。ようやく読みました。
父親の遺骨を母から押しつけられた青年(いい子だがもの足りない感あり・笑)が、師走から新年にかけてのひと月で3人とひと部屋同然に過ごす。ちらっとだけかかわってくる脇役もほどよい。
【風に紛れて耳に入ってきた声が死んだ父親にそっくりで、章介は思わず立ち止まり、あたりを見回した。父が死んだのをしっかり確かめなかったことを改めて悔いた。】
【女の優しさが、母も含めて苦手なのは、後々必ず章介の内側に面倒なものを落としてゆくからだった。】
【~章介は、一定の速度でふわふわと語る師匠の言葉を、深く考える前に眠りの底に引きずり込まれた。】
【「いや、いいと思いますよ。思ったことを口にするのは、大切なことです。実にいいことだと思います。ひとみさんも喜びますよ、きっと」】
【まあ、我々は喪中ですしね。】
読了した方は、上記の抜き書きに感じ入ると思う。
ラストの一章はなかった方がよかったのでは、が正直な私の感想。
彼はきっと大人になっても「師匠」のような男性なのだと思う。
(最初から、私はこの小説を思い出していた。そういう人、いるのでは。マジシャン、舞台での仕事…。)
どちらにしても読んでいる間は、間違いなくその世界にひっぱり込まれた。見事。
桜木紫乃さんは他作品もきっと優れているし、私の心を掴むと思う。画面でのお姿&トーク、同性としても魅かれる。
だけれども、私にとっては2年にいっぺんくらいでお会いしていくのがよい間合いの小説家さんかな。
2021-04-05 11:00