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きれいな言葉より素直な叫び [よんでみました]

きれいな言葉より素直な叫び

きれいな言葉より素直な叫び

  • 作者: 新井 見枝香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/01/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

勝手にもじって『衿賞』とさせていただいている、元祖『新井賞』は2021年1月以降の発表はナシ、となっている。
そんな新井見枝香さんの新刊(といっても今年はじめの刊行)をようやく~。

結論から言ってしまうと、現在の新井さんは「元書店員」となっている。でもコラムや書評者の仕事は続けており、各紙に連載も持つ。ネットラジオも。踊り子の仕事に今は重心を置いている。

これまでの流れは、先日直木賞を受賞した千早茜さんとの一冊や、同じく直木賞作家の桜木紫乃さん作を知る人には既に伝わっているところ。

世間から注目されてきた「書店員」に、エッセイストの顔もあることは想像しやすいが、新井さんは「踊り子」に魅了されて、自らがその道へも入っていく。
お客を得ていく過程や、存続の危機の現状など、何にでも苦労はあるが、読んでみて初めて伝わるものがあった。その現時間がそのまま流れる舞台って、観客の生身の声や心が正直に届いてしまい、一番わかってしまうものなのだろう。
嘘偽りない、と言っていいのかわからないけれど、最近よく言われる「編集」したものでない、まっすぐな世界が存在するというか。

新井さんは、人の目を気にしないで進んでいくところがいい、と思ってきた。でも実は、とても気にしてしまう人なのかもしれない。ご家族とはずいぶん連絡をとっていないとあった。

【ダーツが面白いのは、的に刺さるからである。刺さりもしないことに怯えているうちは、憂鬱でしかない。】
名言では。精神的に揺れ動く体質は感じた。

【~裸を見るより踊り子という活動を応援したいという人がいる。むしろそういったお客のおかげで成り立っている。】

ある女性のお客さんが、地方の劇場まで足を運んでくれた。
【~ストリップは旅のきっかけのひとつだろうが、誰かが前向きに行動することの理由になったのなら、私は素直にうれしい。】

【本屋に入って手に取った本が、ストリップ劇場に入って観た踊り子が、ずっとずっと先の「何か」につながるかもしれない。そもそも私がここにいることが、私にとっての「何か」なのだろう。(略)~たまたまそこに居合わせた人が無責任に放つ素直な言葉で、おまじないのように誰かがほんの少し楽になることもある。それくらいのほうが、素直に受け取れることもあるのだ。】