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胃が合うふたり [よんでみました]

胃が合うふたり

胃が合うふたり

  • 作者: 千早 茜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/10/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

これは、新井賞の新井さんの著作だと私の中でカウントしておらず、今となった。知る人ぞ知る有名書店員と、作家(私は作品未読)が交互に書く。1980年生まれと、1979年生まれ。
タイトルから内容は推測できる。

新井見枝香さん
【~仲間とワイワイ食べるのが楽しいときもある。だが、楽しいせいで、味わうことが二の次になってしまう。私はそれが嫌だった。】
千早茜さん
【~料理人が意図した通りに熱いものは熱いうちに冷たいものは冷たいうちに食べたい。】
本当に美味しいモノをいただくなら、たしかに集中したい。その点が、まず2人は合っていた。

《千早》
【私は記録魔だ。日記は2歳の頃からつけている~】
すごいな。きっと保管もしてあるのだろう。作家になるべくして、か。
【新井どんは拍子抜けするくらい自由だった。目を離すといなくなるし、計画なんてたてない。違うものを見たいときはさっと別行動し、食べるときには自然に集合する。眠りたいときに寝て、喋りたくないときは黙っている。】
とっても憧れるし、それを許容できる関係は「素晴らしい女ともだち」と思う。そう振る舞える新井さんは、もちろん相手を選んでいるわけで。

【けれど、新井どんは真剣だった。踊り子をつとめながらも、書店員も続けようと、各方面と話し合いをしているようだった。】
この本のもう1つの主題は、これだろう。元々、それぞれきっかけあって共に鑑賞へ出かけていたが、ある日、新井さんが出演者側になると言う。ほうぼうへの手回しもあっただろうし、友への報告は遅れたそうだ。
しかし、そんな友のステージを初めて観たとき、それまでの雑念は吹き飛んだ。
【人の作品をまっすぐに見る人は、同じようにまっすぐ放つのだと思った。~あんまりに可愛くて、楽しそうで、この子はステージで輝くために生まれたんだ、と感じた。】

新井さんは今、書店員&もの書き&踊り子の3足。正規で働きながら、所属先の理解を得て、自分が進みたい別の道も同時に~というスタイル、もっと認められていくべきでしょう。

【~新井どんは時折すっと退くのだ。衝動的な感情で人を傷つけ、自分も嫌な思いをしないように。途絶える連絡やふと生じる距離感は、言葉足らずな彼女の優しさだった。~彼女のほうがずっと人や自分を慮っている。】
適当な距離感。ますます人として惹きつけられる、新井さん

ちなみに、私もよく存じ上げない千早さんは、
《新井》
【~クッキーを、きちんとソーサーに載せた紅茶とともに味わっている~】人。
私のイメージもそうです。

千早さんの文章の中で、考えさせられたことが。小学生時代をアフリカで暮らしており、映画『パラサイト』は昔の自分の姿を突きつけられたようで苦い気持ちになったそうだ。
自分の家族は、使用人を使っていた側だった。彼らに裏の顔があることも幼いながら気づいていた(詳細略)。
別角度からも考える。大切なことに気づかされた。

《新井》
銀座はパフェの街である。】
あー、別腹のパフェ、食べたい。長いこと出かけられていないそちらの方へ行けたのなら、りっぱなやつ、いただきたいな~。何も考えずに。