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人間失格② [太宰治と家族たち]

につづき。
【~自分には「空腹」という感覚はどんなものだか、さっぱりわからなかったのです。へんな言いかたですが、おなかが空いていても、自分でそれに気がつかないのです。~自分が学校から帰って来ると、周囲の人たちが、それ、おなかが空いたろう~などと言って騒ぎますので、自分は持ち前のおべっか精神を発揮して、おなかが空いた、と呟いて、甘納豆を十粒ばかり口にほうり込むのですが、空腹感とは、どんなものだか、ちっともわかっていやしなかったのです。】

【自分は子供の頃から、自分の家族の者たちに対してさえ、彼等がどんなに苦しく、またどんな事を考えて生きているのか、まるでちっとも見当つかず、ただおそろしく、その気まずさに堪える事が出来ず、既に道化の上手になっていました。つまり、自分は、いつのまにやら、一言も本当の事を言わない子になっていったのです。】
【~ひたすら無邪気の楽天性を装い、自分はお道化たお変人として、次第に完成されて行きました。】
【~自分のお道化もその頃にはいよいよぴったり身について来て…(略)】

【けれども、自分には少しの不安も無く、あの警察の保護室も、老巡査もなつかしく、嗚呼、自分はどうしてこうなのでしょう、罪人として縛られると、かえってほっとして、そうしてゆったり落ち着いて、その時の追憶を、いま書くに当っても、本当にのびのびとした楽しい気持になるのです。】
【どうせ、ばれるにきまっているのに、そのとおりに言うのが、おそろしくて、必ず何かしら飾りをつけるのが、自分の哀しい性癖の一つで~(略)】

ほかにもポチポチと付箋はありますが、このへんで。
私小説作家なので、少しは変えていたとしても自己分析が多く含まれていると思われます。
大地主の家の六男坊(11人の10番目)で生まれ、直接生みの母に甘える期間なく、乳母タケ(本を読み聞かせた)に育てられ~で、性格形成されていき…。
うがった見方を早いうちからした子ども、でしたね、まちがいなく。

やっぱりこの本は、何年後かにまた一気に読み返しましょう(また全然違う感じ方をするかも)。