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会いにゆく旅 [森まゆみさん]

会いにゆく旅 (わたしの旅ブックス)

会いにゆく旅 (わたしの旅ブックス)

  • 作者: 森 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2020/01/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

5:20、私は温泉にいた。朝がしらんでくるのを寝そべって浸かりながら見た。この本を読み終え、無性に行きたくなったのだ(Ayuは留守番)。
寒の戻り。それ以降、きょうはずっと雪が降っている。

同シリーズで、また刊行。うれしい限り。雑誌を中心にさまざまな媒体に発表した紀行文をまとめる。

森さんは、すべて原稿は手で書くという。推敲、手書きは大変でないのかな。
旅先で、一年は待たなければならない高級万年筆を注文された。
【パソコンは文明、万年筆は文化。】

【いま、日本の食の自給率は39%。おそろしい数字である。いま農民は300数十万人。人口の3%しかいない。漁民にいたっては20万人。…】
中国製は今後、コロナの影響で頼れなくなるだろう。この機会に、食も各製品も極力国産に努めたらいいのでは。高くなるかもしれないが、質はきっとよい。国内だけでまかなわなければならない非常事態がある、ということである。

【1996年に身近な文化財を登録する制度が国にでき、有形文化財の温泉宿は増えている。】
知らなかった。
泊まれる重要文化財、登録文化財は多く、日本文化を守るには客となるのが一番のようだ、とのこと。
【山は暮れるのが早い。まずは光が差し込む風呂につかることにする。】
あー、朝風呂、昼風呂はぜいたくそのもの~~。

【鳥取へサンライズ出雲という夜行列車で行くことに決めた。~個室だぞ。鏡付きだ。スリッパも寝巻きもある。~と子どもっぽくうきうきして、旅立ちのビール缶で窓に映る自分と乾杯した。】
ビールが美味しいと思えたらこれはたまらないのだろうな。我が家族がこの列車で旅したのはもう20年くらい前のこと

【神戸の地震の時はまだ3人の幼い子を抱え、何も手伝えなかった。今度こそ、と思った。】
3.11以降、森さんの足が向かうのは東北ばかりとなる。

森さんは、歴史的建造物の保存活動にも取り組んでいる。だから、オリンピック開催で失われていくモノを案じ、一貫して反対してきた。東京オリンピックやら何やらで資材も職人も廻ってこない、という地方の現状もある。新しい方ばかりに向かうのでなく、失ってはならない古いものの修繕が優先なのだ、と感じた。

上野駅が67階建てのビルになる構想があったことは初耳だった。その後、バブルの破綻と共に立ち消えとなったそう。それでよかった。それでなくても以前の上野駅の姿はもうない。私でさえも懐かしい。

【あと5年したら、家を始末して、お金を懐に、いや普通預金に入れたまま死ぬまで旅をしたい。旅先で死ねたら最高だ。いまの私の心配は死ぬことよりも、「死ねなかったらどうしよう」ということなのだ。子どもたちは3人とも「お母さんの稼いだお金なんだから使い果たして死んでくれ」と言っている。】
ご自分のいずれ辿る介護生活を憂いてか。医学の発展を、文明の発達と合わせ、あまり望まれていない派なのだと推測。わかる気がする。