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もたない男 [整理整頓をめざして]

もたない男 (新潮文庫)

もたない男 (新潮文庫)

  • 作者: 中崎 タツヤ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 文庫

中崎タツヤさんは1955年生まれの漫画家。先日の読書内で「影響を受けた」とあったので借りたのですが、予想以上にその信念というか(これはりっぱなビョーキではないかとさえ)、まぁ本当にこういう人がいるのだなぁとびっくりしましたが、なかなかの一冊です。おもしろい。一連の整理本の中でも不思議なすがすがしさが残りました。

【部屋にはほとんど何も置いていないから「不動産屋さんに内見に案内されたみたいだ」なんていう人もいるくらいです。仕事場にはパソコンはなく家電製品も掃除機だけなので、エアコンを使う時期以外の電気代はほとんどかかりません。春や秋は基本料金を除くと100円ぐらいですね。】
あくまで「仕事場」の話ではありますが、その紹介写真もすごい。究極です。

【携帯電話は家の固定電話を捨ててしまったため、捨てるわけにはいかなくなりましたが、なるべく仕事場にはもって行かないようにしています。仕事場にはできるだけものを置いていません。】
【(以前はパソコンも使っていた)~私にも人並みの好奇心というものがありますからね。それは、考える時間がなくなるということでもあるんです。そういうわけでパソコンは捨ててしまいました。←もたないと仕事に集中できる】
【電源コードが嫌いなので充電式も考えましたけど、掃除機のコードはくるくる収納されますから我慢できるんです。】

【私の場合、ラクをするとどんどんやる気がなくなってくるんです。パソコンで原稿を書いて、メールでデータ送信するのはラクだけれどラクチンな分だけやる気がなくなってくる。それで、ペンで紙に描くことに戻したんです。パソコンのソフトで一発でできていたべタ塗り、下書きを消しゴムで消すのも全部が全部、手作業に戻しました。~原稿があがったら、宛名を書いた封筒に入れて~宅配便の営業所までもって行く。~パソコンで原稿を描く前までは普通にやっていたことでしたが、本当にイヤになるくらい手間暇がかかるようになりました。
しかし、一方でちゃんと仕事をしているという気持ちにもなれたんです。】
【(パソコンは描いている途中にデータが消えてしまったこともあり)~ですから、使い物にならなくなるかもしれないという不安が常にあって、予備も買ったんです。ただ、パソコンを何台ももっているストレスに加えて、いつダメになるかもしれないという不安もストレスになっていました。】

【~例えば、ホームレスの人はブルーシートで家をつくりますよね。そして、家ができたら、そこにやたらと荷物を持ち込む人が多い。~荷物を多くもつ理由は生活や将来への不安からきているのだと思います。】

【あんまりものをもちたくないと考えるようになったきっかけとして、中学校のときのノートが原体験になっていると思います。中学三年生のとき、ノートをバインダー方式に切りかえて科目ごとのノートを捨てたことが、いまから考えると大きいような気がします。~教科書は仕方がないけれど、学校に各科目ごとにノートをもっていくのは、煩わしかったんです。】
【人の目を気にしていたら、行動の自由が奪われます。他人からどうみられたっていい、どう思われたっていいと思えば気がラクになります。携帯はかかってきても出ない、着信履歴をみて、必要だったらかける。自分がさみしくなったときにかける。それだけでいいんじゃないか、と思っているんです。きっとあっちも、私がそういう人間なんだ、とわかってくれて、たいした問題にはならないんじゃないかと思うんです。だってそういう付き合いをするのが私という人間なんですから。】
【ポイントカードは嫌いなので、一枚ももっていません。TSUTAYAのカードはDVDをどうしても借りたくなった時にその都度、会員になってつくっています。カードのポイントをためていくと、どれくらいトクなのかわかりませんが、いつもカードを持ち歩くほどトクするとは思えません。いわれるままにつくっていたらきりがありませんから、私はつくりません。】
私もだまされて(苦笑)簡単につくることは極力しなくなりました。たしかにあれはストレスになる。それでも数枚はお得と信じ存在していますが、全部持ち歩くのはかさばるため、予定なく突如使う可能性あり以外は、名刺入れの細長いクリアケースに入れて「家保存」にしています。
クレジット機能のあるカードも、社会人になって初めて作った年会費無料のもの「1枚」に完全に絞りました(どうしても欲しいものに出会ってしまい所持金が足りなかった時の備え&海外旅行では信用上必要なので)。

【普段は同じ格好しかしたくないから、同じものを何枚か買ってそれを着回すのが私の服装の基本となっています。~本当は二枚がいいんですが、二枚ではなかなか洗濯が間にあわない。
ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは「二枚のサリーと、それを洗うバケツがあればよい」といっていたそうです。実際、彼女の遺品は着古した木綿のサリー二枚とカーディガン、ぼろぼろの布製の手提げ袋、すり切れたサンダルだけだったそうです。(←著者の憧れの人物)】

【~歳をとってものを捨てたいといっている人たちの多くは、捨てたいのではなくて、整理したいんだと思うんです。捨てられないのではなくて整理できない。
だから例えば家をリフォームすれば、必ず本棚や食器棚などの収納をつくります。そしてみばえのいい収納法を研究します。床下とか壁にきっちり収納スペースをつくって、できるだけものを捨てないですむ方法を考えるんです。
思い切って捨てるのならば、まずは収納スペースから排除すべきです。私がリフォーム屋さんやインテリアデザイナーならば、絶対、収納スペースはつくりません。壁だけのとてもシンプルな設計にします。】
【~思い出の品なんて信用していなかったし、大切な思い出はものでなく記憶に残るものだとずっと思ってます。】
…中崎氏は、妻と過ごす家(自宅)は、妻の意志もあるのでそこまで徹底していない、とありますが、それにしても、ここに紹介できなかった普通では考えられないほどの「ものを持ちたくない主義」には口が思わずぽかーんとあきます。
ですが、なぜだかとても穏やかな心地で惹かれてしまうのです。ゆるりさん、とはまた違う形で。

最後に、“断捨離”のやましたひでこさんと南伸坊さんが対談しています。
南【~だから中崎さんの仕事場に極端に物が少ないってよくわかります。集中するためには、物が少ない方がいい。】
…中崎氏は、ある時、母親からの手紙の束も思い切って捨てました。そこで、本当に前に進めたと言っています。
やました【中崎さんは~「思い出の品」もバンバン捨てますね。私も、あまり執着なく捨てられるんです。仲の良い友人で、思い出の品は全部とっておきたいと言って、家じゅうそういうもので溢れているのだけれど、私、羨ましくて。~とっておきたいと思うような素敵な思い出とともに生きてきたんだ!と思って。私なんか思い出したくないことばっかり(笑)。だから中崎さんも、私の視点から言うと、過去を思い出したくないのではないかしらと。】
やましたさん、私はあまり好きではなかったのだけれど、これは当たっているのでは?と。鋭い気が。
「過去を振り切って、行く」 そこも、とても整理(捨てる)には最重要な気がしています。
やました【中崎さんは「思い切って捨てるのならば、まずは収納スペースから排除すべきです」と。これは本当にその通りで、散らかった状態よりももっと怖いのは、大量の物を収納によって整然と堆積させている状態。一見綺麗に見えますけれど、要らない物を溜め込んでいることには変わりがないですからね。】
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