SSブログ

鏡は横にひび割れて(『鎌倉殿~』に関連して) [アガサ・クリスティー]

鏡は横にひび割れて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

鏡は横にひび割れて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/07/15
  • メディア: 文庫

久しぶりにアガサの世界に。この作品は、私の中でまだ読み残しているリストに入っているいくつかの1つでした。返却期限にうまく押され、一両日で一気に。

ここに寄ってくださっている方なら、理由はすぐにわかるかも。
未だに話題のつきない『鎌倉殿の13人』。ラストは彼女の小説をヒントにしたという脚本家・三谷幸喜氏の発言から、視聴者の謎解きは始まりました。

SNS上で有力なのは、この『鏡は横にひび割れて』です。
カーテン』という声もありましたが、三谷さんは「マイナー作品」とおっしゃっていました。これはメジャーの部類と思われるので違うでしょう(私はもうその筋をすっかり忘れてしまった・再読してよいな)。

で、450p以上を読みました。ポアロものではなく、ミス・マープルです(これはマイナー要素だ)。
数多い登場人物の説明など、今までにない流れのわかりやすさも感じました。
そして、私は『鎌倉殿~』のラストを知っているにもかかわらず(つまりは結末の予想がつきやすかったハズ)、読み終えた今もどこをオマージュとしたのかはっきりとわからないのです
そういうポワッとした意見は、ネット上でもたくさん見受けられます。
要は、脚本家がこの小説にヒントを得たらしいゾ~くらいに終わらせるのがよいのだと思います。

以下は本作品のネタバレとなります。推理小説では厳禁です。よろしい方だけどうぞ。


…作品自体についていえば、さすがの私も早いうちから、他の誰かを狙って誤って殺されたという事件ではない、と予測がつきました(←この点については『鎌倉殿~』との関連性はありません)。

☆この女性に毒を盛った犯人は、ある壁の絵(母子像)を独特な目で眺めて殺意へ~という点が、政子がラストシーンで、我が子・義家を追いやった首謀者が弟・義時と知り、薬を与えず見殺しした、に重なるのでは~とする意見(薄々その事実はわかっていたでしょうが)。
例①、

小説では、罹患していたその女性が接触したことで妊娠初期の当人が風疹をもらい、待ちに待った子が障害を持って生まれたことを恨んでの犯行。しかし、その子は物語では死んではいないのですよね(施設に入っているとあり)。まぁ、子どもが患った原因~はこれなのですが。

☆最後、女優(と明かしてしまった!)である犯人は睡眠薬の多量摂取で亡くなります。それまでも精神が安定しない人物として描かれており、さらに殺める結果に(+2人)。
私は犯人の夫が、彼女がこれ以上の殺人を犯さないよう最期を見届けた(あえて助けない)、あるいはそうなるよう意図的に進めた(このへんの真実は小説もぼかしています)という点を、『鎌倉殿~』のラストシーンに含んだのではと考えます。
⇒この方がいろいろと詳しく書いてくださっています

「もう手を汚すことはやめて・今までおつとめごくろうさま」が小池栄子さん演ずる政子の心情。
総合して、おそらくはこのアガサ作品なのでしょう。

…長くなりましたが、小説としてもよい作品でした。この機会がなければ、私は10年経っても読んでいなかったかもしれません。

上記のナゾには触れていませんが、三谷さんの最新のYouTube映像はこちら
「ナマの舞台と映画やドラマの作品を世に出すことの違い」、興味深いと思いました。
観客側のこと、見る側のこと、あたりまえなのかもしれませんがよく考えている。
作品に責任を持っているというか。こういう方ばかりでないと思います。