誘拐 [よんでみました]
2018年春に読む。
著者(1933~2004年)は読売新聞記者。ノンフィクションのこの作品で、文藝春秋読者賞、講談社出版文化賞受賞。
東京オリンピックを翌年にひかえた1963年、東京の下町で起きた幼児誘拐「吉展ちゃん事件」である。
事件の名だけは知っていたが、私のよく知っている場所がこんなに出てくるとは思わなかった。
警察の失態(身代金の紙幣のナンバーを控えなかった、ミスの公表をごまかしたり等)が目につく。吉展ちゃんの命を重んじていないことがとにかく伝わる。許せない。
この事件をきっかけに「逆探知」に公社が協力するようになった。
犯人の貧困も詳しく描かれる。いわゆる「育ち」。
身代金50万円という額がそれを彷彿とさせリアルである。奪取に成功すれば犯人・小原保の初めて手にする大金…。
実際には誘拐した日に男児に手をかけていた。1971年12月、死刑執行。
どこで薦められていたかは忘れた。早いうちに読まねばと思っていた。
厚かったが一気に読ませた。またノンフィクション作家の力を知る。
→《第3回衿賞》
2019-10-21 20:00