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向田邦子の陽射し [向田邦子と妹・和子]

向田邦子の陽射し

向田邦子の陽射し

  • 作者: 太田 光
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

【向田さんは少しも騒がず、やすやすと、ど真ん中で、誰も触れてはいけないはずの、悪くて魅力的なことを堂々と書いてしまう。震えるほど恐ろしいが、惚れ惚れするほど、格好良い。】
太田光氏のこの1文に、すべてが集約されていると言っていいだろう。
彼の、ほうぼうに書いた向田作品に関する文章を集めているだけで、目新しいことはなかったが、本文の半分ほどは、彼の好きな向田作品がそのまま収められているので、実質は「向田+太田」の本である。本人に代わり生存されている親族、妹・和子さんの、太田への全面的な信頼あってこその刊行、ということだ。

短編では『大根の月』がいいと書いてある。私には怖い作品だが、最後はうまくまとまるので、その点は好き。『かわうそ』は本当に恐ろしい。向田作品は、圧倒的に同性が読者だと思うが、男性からだとこれくらいヒヤヒヤした作風が支持されるのかもしれない。

エッセイ『マスク』は私も大好き。
“「聖夜」ということばを感じたクリスマスは、この時だけである。”←うん、これ!
『ごはん』も好き。戦争中、空襲のさなかの向田家の様子である。

太田氏は、私と同い年の男子である。私が本格的に読んだのは(もうそろそろ読んでもよい歳かな、と自分に許可を出した感じで…)ここ5、6年のことと言ってよい。
それを、中学生の頃から読んでいた、という。ませていたのだな。
【「あ・うん」「阿修羅のごとく」などをみて~テレビドラマの“脚本”の部分を意識して見るようになり~、どれを観ても“脚本・向田邦子”以上に僕の心を動かす作品が無いということを当時は漠然と、やがてハッキリと確信しつつあった。】

【女は男よりも本当にいろいろなことを考える。男は単純で、いってみれば本能でこっちのほうが居心地がいいやと思ったらそっちへ行ったりするんですが、女は一つの事件が起きると、それに対してああでもないこうでもないと同時に考える。
向田さんの作品の中に出てくるのはそういう女ですね。】
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