ベニシアさん [よんでみました]
2013年9月に公開された映画『ベニシアさんの四季の庭』。
かなり以前のBSの録画を、ふと時間のできた先日によーやく鑑賞した。つまりベニシアさんの訃報(昨年6月・享年72歳)のあと、ということ。
英貴族出身で大原に暮らしたベニシア・スタンリー・スミスさんのことは、Eテレでことあるごとに再放送されていた『猫のしっぽカエルの手』でみな知っていたと思う。和洋折衷&ハーブの庭で過ごす姿に私は癒されていた。
この映画を見終えて、一筋縄ではいかないベニシアさんの進行形の人生に私は驚いた。きれいきれいな面ばかりに、ただ憧れていたのだと。
もう少し深く、このご夫婦のことを知りたくて、図書館検索にかけた。
季刊雑誌『チルチンびと』での連載が2冊の本として刊行されていた。加えて、ベニシアさんの最期の詳細は、昨年秋号の巻頭に写真家の夫・梶山正さんが載せ、それをもってすべての連載を終える…とあった。
ベニシアさんは1950年生まれ。正さんはその9歳年下。バツイチ同士の結婚。
彼女には既に3人の子がおり(統合失調症の娘さんあり)、正さんとの間に新たに男の子をもうけた。
正さん、山男であり、ちょっと逸脱している側面があると私は思った(ベニシアさんを哀しい思いにさせたことも)。数々の怪我にもあっている。
イギリスの貴族生活に早くから違和感を感じたベニシアさんは、インド訪問などを経て、日本にたどり着く。日本人男性と最初の結婚。その後、正さんと再婚し、大原の古民家に移り住む。
2002年、NHKのガーデニングコンテストの入賞がきっかけとなり、彼女出演の番組誕生となった。
NHKの目に留まり、番組制作されることは間違いなく名誉。お金ではないのだろう。
だが『チルチンびと』の巻末に(編集者の筆によるもの)、出演料が一回の撮影で10万円だったとあり、私もさすがに安いなぁ~と。また、よく噂されるように、再放送料は驚くほど少ないことは真実のよう。まっ、正さん、彼女は儲けようとは思っていなかった(私の暮らしをみなさんに紹介したいだけ)というけれど。
ベニシアさん、2015年に目が見えなくなってきたと訴える。脳の萎縮を来たす進行性の疾患(いずれ認知症に)と判明。家族のフォローは容易ではなかったろう。
2021年7月からはグループホームへ。面会の不自由に加え、本人のコロナ罹患も重なり、より重篤に。
23年春、医師の促しで病室から大原の自宅へ。英からかけつけた子どもたちにも見守られ、静かに最期を迎えた。
家探しの際に、ご本人がビビッと嬉しく感じた通り、「死を迎える家」となった(『私が死ぬ家を見つけた!』)。
【正へ:ありがとう。すべてありがとう。もう、いろいろなことがあったね。許さないといけないこともいっぱいあった。】
【大原の我が家は、私がずっと夢見てきたことの集大成といえる。ここの小さな庭は、私の心の内なる庭を現している。】
【老いにつれて彼女は目が見えなくなり、できないことが増えている。ベニシアは戸惑う。そして夫の僕も、戸惑っている。~これもすべて人生なのだ。】
【僕の心の中に彼女は生きている。ハーブや花を愛した彼女を想いながら、僕は今、庭の手入れをしている。】
失ったあとのほうが、より長く一緒にいる感じがすると。
亡くすということは、そういうことなのかもしれない。
上記3冊はいずれも正さんの写真ふんだんの見やすい書籍となっています。関心のある方は、お二人の青年時代を丁寧に追った文章を読んでみてください。ここは、ごく一部の読後感です。
【追記】
↑ こちらが夫の手による最新のエッセイ。8年間の闘病生活が中心のようです。
いずれ読みたいと思います。
2024-02-20 14:00