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夜の光に追われて [太宰治と家族たち]

夜の光に追われて (講談社文芸文庫)

夜の光に追われて (講談社文芸文庫)

  • 作者: 津島 佑子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/09
  • メディア: 文庫

9歳の息子を突然喪った「私」が、王朝文学『夜の寝覚』を自分流に組み立て直して綴る。読売文学賞受賞。
…想像していたものとは、まったく違っていました。津島さんが息子を突然の浴室での呼吸発作で亡くしたことを経て、それをどう含んで描くのかと思っていましたら、つい古典作品の現代語訳?に引き込まれた形になりました。短い「手紙」を挟みながら、ほとんどはそれにて構成されています。

【「夜の寝覚」の作者であるあなたに手紙を書くことを思いつき、私なりの「夜の寝覚」を紡ぎあわすことをはじめてから、私の日々の送り方も確実に変わってきました。毎日、茫然と泣き暮らす、という状態を脱することは、どうにかできたようです。】

【~この世の人間にとってなにが本当の喜びなのだろう、意味のあることなのだろう、それはほんの小さな頃にはじめて知った日の光の暖かさなのではないか、水面を輝かす光の眩ゆさなのではないか、と思い直すようになったのです。】
津島さんにとって、他の作品にもみられるように「光」というのは大切なキーワードなのだろう。

【人は生まれつづけ、死につづけている。そして、この私に与えられたのは、今の時代の日本という枠組みである。そのことを意識せずにもいられなかった。その枠組みのなかで私は生き、小説を書きつづけてきた。そう思うと、無性に過去の時代に生きた、私とよく似た立場の女性と話を交じわしたくなった。】
手続き上の結婚を経ないで息子を持った筆者。「夜の寝覚」では、姉の夫との間に子をもうけた妹の苦悩が語られる。
『千年の時空を超え、交響する“物語”と“物語”』(裏表紙より)
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