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こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち [よんでみました]

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫)

  • 作者: 渡辺 一史
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫

単行本は2003年3月刊。
ずーーっと前から気になっており、借りようと思いながら引っ越し。そうこうしているうちになんと映画化。できるなら原作を読んでから行きたいもの→公開期間を逃す。近日中にDVD発売だそうで劇場でじっくりはもう無理みたい。

講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞。
1968年生まれのフリーライター渡辺一史さんは、ラジオの出演もたびたびあったはずで(それも逃す)、すべてが後追いとなり、ようやく読了した形です…。

筋ジストロフィーの鹿野靖明さんとボランティアの日常を描いたノンフィクション。痰がたまると吸引する…などの本人指導も受けつつ、2年以上に渡って取材。その中での著者の苦悩(どう文章表現するか)の正直な部分も垣間見れる。
最新の文庫本は550ページ以上になり、一言ではうまく感想できないが、体位を常に変えなくてはならない鹿野さんが、ボランティアに自分の要求を遠慮せずに伝え、だからこそ人が集まり、育っていった。それにつきると思う

たくさんのボランティアの証言が収められている。どれもが考えさせられるが、私は特に内藤功一さん、佐藤重乃さん、斉藤大介さん(「普通」ということ:説明略)の3人が印象深かった。
障害者と同じように、健常者もそれぞれの世界で悩んで生きている。
【(斉藤)「やっぱり、土壇場で逃げなかったっていうことがね、オレにとっては、いまだに大きいっすね。ああいう経験をして、ちょっと自分を信じられるようになったというか。オレは土壇場でも、きっとまた逃げずにがんばれるんだろうなって。」】

【鹿野は一種の「病院嫌い」である。自分の症状や治療について、納得いくまで医師に説明を求め、「なぜ今、利尿剤を打つのか」「このクスリにはどんな意味があるのか」など、若いナースを問い詰めては、煙たがられることが多かった。】
でもこれは当たり前のことでは、ない? 先日読んだ安積さんの著書にも重なるが、患者側の疑問をなくす医療でなければと思う。医者が一番でない、そして患者はいつも介護者に対して気を使うばかりでなくてよいのです。それではいつまでも本当の関係はできない。。。

【鹿野は、何度か療養所からの「脱走」を試みている。そこは療養所なのだが、なぜかみんな「収容所」のように思っていたという。】
自宅で暮らすことを望み、実現した鹿野さん。
さまざまな側面があり、ここにすべて収められませんが、特にボランティア側の心情が細かく取材されている貴重な作品と思います。
出版の形を、生前の鹿野さんが見届けられなかったことが無念ですが(徐々に症状が進む、ご本人のその苦しさを思う…42歳で亡くなる)、ご両親の承諾の上、一冊となり、こうして現在の私たちにもいろいろと考えさせてくれます☆

《北海道、はそういう土壌があるのでしょうか。著者も鹿野さんも安積さんも北海道~。》