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明るい夜に出かけて [よんでみました]

明るい夜に出かけて

明るい夜に出かけて

  • 作者: 佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 単行本

山本周五郎賞受賞作。佐藤多佳子さん、お名前は知っていたけれど、個人的に「手にした」のは初めて(仕事上はたぶんある、それくらいの記憶)。
児童文学出身。←これはポイントとして高いと私は思っています。子ども向けに書くことがうまいということは、大人にはもっと上手に演出(この言葉が適当かは?ですが)できる作家ととらえています。

読み始めた時は、この人の作風なのか、この作品だけがそうなのか、話し言葉で綴られていることに違和感ありあり。私は(昔からある)丁寧な文章調の方が好みではあるのです。
しかし、進めていくうちにそんなことはどうでもよくなり、むしろこれでよし、後半にいくほどストーリーにひき込まれていきました。うまいです。絶妙に空気感が伝わります。本年のMy読書ベスト5に入ります!

【~好きな深夜ラジオだけは、色あせなかった。聴けた。ちゃんと聴けた。感情が動いた。笑えた。たぶん、だから、俺は、自分で自分を病気だとは考えてなかったんだ。】
いろいろあって大学休学中。実家から出て、コンビニでアルバイトする中での交流を描く。
深夜とはいえ客と私的な会話で盛り上がれるのか…等はありましたが(フィクションですからネ)、そんなことはどうでもよい。
人付き合いが苦手な彼、わずかな(4名)関係の中で生まれたあたたかい血が徐々に流れはじめます。
『虹色ギャランドゥ』のラジオネームの女子高生がよい。彼女にもどこか屈折はあるのですが、本質的に素晴らしい考えの持ち主(小説なのでぼやかしておきます)。歌い手であるコンビニ先輩もいい。昔からの友もよい(さりげないが)。

2014~15の『オールナイトニッポン・byアルコ&ピース』が何でも出てきて異色な本と思いますが(あとがきではもちろんことわりを入れていること、そしてこんなふうに書いてもらえて幸せなコンビだと思う)、この深夜ラジオ番組が彼らたちの心のよりどころとなっています《この番組を生放送で聴くために主人公はバイトの休みを設定する熱☆》。
作者自身が実際にハマって聴いていたそう(私よりちょっと上の方なので、これから私もハマれるか?・笑)。
今のラジオは十分に聴き手とナマで交錯(Twitter等ネットを介して進行)していて、私がかつて馴染んできた受け身(+ハガキ職人)で聴く『ラジオ』とは状況も変わっていますが、それでも『ラジオ』って媒体が今も悩み続けている若い人たちを精神的に救っているならば、テレビやスマホよりずっと素敵で、今後もけっして無くしてはいけないと思います。
『ラジオ深夜便』もあるし、中年以降も十分救われている、ですね♪》

よい物語は、恋愛を描かなくても十分成立するのだ。それを実証してくれました。最後までワクワクな通勤読書(会社での小さなことも雲散霧消)。
この続きが知りたいな。できそうですよね?(でも書かないかな??)
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