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夢の歌から [太宰治と家族たち]

夢の歌から

夢の歌から

  • 作者: 津島佑子
  • 出版社/メーカー: インスクリプト
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: 単行本

新刊見本で入ってきた時、ちらちらとみて、亡くしたお兄さんについての文章もあるな~とチェックしていました。このエッセイを持ち歩いている間は、読み進めるのが待ち遠しくて、とても幸せでした。

奥付手前には『津島佑子さんは本書の校正刷を読むことなく先立たれました。しかし(略)~僅かではあるが修正が書き込まれており、ひととおり再読された後のものであったと思われます。したがって本書は原則として初出紙誌および書籍を定稿とし(略)~若干の表記を改めるのみにとどめました』と。

震災以降、「原発」についてたびたび書いてきた津島さんでした。前半はそれが中心です。まさに晩年のテーマ、だったともいえるでしょう。
こうも書いています。
【日本やほかのアジア諸国にとって不幸だったのは、西欧から突然ぶつけられた近代文明を表向きの面でしかとらえることができなかったところにあるのではないか、と私には思えてならない。蒸気船に蒸気機関車、そして電気なるものを見てびっくりし、急いで追いつかなければ、と焦った(略)。日本は「近代化」にはげみ、猛スピードで成功したものの、早速、富岡製紙工場の奴隷的労働の問題が起き、足尾銅山の鉱毒問題も起きてしまった。戦争に突入しても、原爆をふたつ落とされて無条件降伏に至っても、日本社会の基本的な「誤解」は変わらなかった。
今度の3・11で私たちの目の前に露わになったのは、そうした日本のゆがんだ「近代化」だったのではないか。社会の仕組みを変えるには、これまでの概念を根本から問い直さなければならない(略)。どんな社会で、どのように生きたいのか、ひとりひとりが懸命に、3・11の経験から考えはじめなければならない。小説家だって、当然、例外ではない。(略)】
近代化、便利な社会…イコール人間にとって幸せ、ではない。
どんどん進んでいくばかりでなく、ここで立ち止まり、踏みしめて考えれば、昔の生活でも十分幸せだった、むしろ、そちらが本当ではない?があるのでは・・・。「心」もなんだかハイテク方向にいきすぎて、置いてけぼりにしてきた大切なことがきっとある。
ものを大事にする、現状で工夫するなど、今、なるだけ余計な電力等を消費せずに暮らしてみる、を胸に過ごしたい気がします《☆別件ですが、時の人「稲垣えみ子」さんについては、いずれ書きます…『情熱大陸』はインパクトありました》。

ご自身の、波乱の結婚生活についてもさらりと書かれていました。正直に生きてきた人生だったということでしょう。

ラストには、お嬢さんの津島香以さんが当時の病状を詳しく書いています。
【熱を出し、食欲がなくなって、ベッドから起き上がれなくなり、再び病院に担ぎ込まれたのが2月15日。腎不全を起こしていた(略)。誰か会いたい人がいるのではないか、なにか言い残したいことがあるのではないか。でも母はすぐに会話ができる状態ではなくなり、あっという間に逝ってしまった。早くて1、2週間と言われた日から、たった4日しか経っていなかった。】

先日までA新聞では太田治子さんの連載があり、興味深く読みました。母親ちがいとなる津島さんと交流した時期もあったのですね~。最近はなかったようですが。
太田さん母娘の生活も大変だった。津島家の母・長女《つい先日の津島園子さんら津島家三代です、姉妹よく似ていますね・斜陽館ブログより》・長男(早逝)・次女(佑子)も他人にはわからない苦労があったことでしょう。
でも、今回の連載は、津島さんがこの世を去られたあとだから…だろうとは想像できます。
津島さんの本は、刊行がまだまだ続いています。なかなか出来ていませんが、整理してまた書きたいと思っています。
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