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向田邦子の恋文 [向田邦子と妹・和子]

向田邦子の恋文 (新潮文庫)

向田邦子の恋文 (新潮文庫)

  • 作者: 向田 和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 文庫

深かったです。哀しいというか、ジーンときて。
作家邦子は長女、そのあと長男、次女、三女。三女和子さんの著。お姉さんの血、ありますね。十分、文章が上手です。上手というか、ひややかにさらっと、が、邦子さん調、ですよね。

前半は、邦子が33歳(S38年)頃、懇意にしていた「N氏に宛てた手紙」&「N氏自身の日記」を連動して紹介しています。
邦子は作品を書くために缶詰になったホテルから、まるでメールのようなつぶやいている言葉で埋めつくした手紙を出しています。世話女房のようでありながら、一方で自分の実家の家族を守るためにも生活していました。
N氏には妻子がありましたが、既に別に住み、離れに実の母親がいる住まいで暮らしていました。病も患っていました。記録映画のカメラマンだったということで、N氏が撮影したと思われる若き日の邦子の美しいポートレートが残っています。

【整理整頓は姉の数少ない苦手なことだった。むしの知らせでもあったのか。】
飛行機事故にあった台湾へ行く前だけは、マンションがきれいだったのだそうだ。

【二十畳の部屋にスチール製の整理棚が三箱あった。姉好みでない素材なので違和感を持ったが、抽斗(ひきだし)ごとに「説明書」「スクラップ」「年金」「保険」「(外)旅行」「手紙」「名刺」「要返・切」「う」等々、見出しが付いている。
「う」は“うまいもの”の略である。取り寄せたいものの新聞や記事やチラシを破ったり、ちぎったり~していた。】

【所有していた、中川一政の(もうひとつの)書は、
 もう、我は駄目だと思ふ時もある やつてゆかうといふ時もある】

【母(向田せい:現在100歳近いはず)の決定はいつもギリギリに下される。長男の保雄、次女の廸子(みちこ)、三女の私が思い思いにああだ、こうだと言うのを黙って聞いて、泳がせておいて、ここ一番というときに言葉少なく、感情を表にあまり出さず、きっぱりと「お母さんはこうします」と宣言する。
姉の遺品をどうするか、というときも、そうだった。】

最後の最後を読むまで、N氏は病死だと思って私は読んでいた。
【死の2年前、N氏は脳卒中で倒れ、足が不自由になり、働けない状態にあった。私がそのことを知ったのは、姉の死から20年経った平成13年の夏、姉の“秘め事”を自分の責任において公開しておいた方がいいと決めたからである。NHKの衛星放送が没後20年のドキュメンタリー番組をつくり、そのなかで紹介された。番組の制作スタッフが調べてくれたところ、N氏は自ら死を選んだという。】

沢村貞子さんの恋、も重ねて私は思い出していた。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/Eri-to-Ayu/sub24.html#sawamurasadako

…手にする出会いがあってよかったという本。続けて妹・和子さん著を読みます。
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