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江戸へおかえりなさいませ [よんでみました]

江戸へおかえりなさいませ

江戸へおかえりなさいませ

  • 作者: 杉浦 日向子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/05/23
  • メディア: 単行本

先日の「一箱古本市」見学で、しばらく話し込ませてもらった店主さんから購入。と言っても、昨年刊行の単行本です。いろいろなところに発表した、寄せ集めの一冊です(もう新刊は出ないのだから…)。杉浦日向子さん著作、久しぶりです。

【蕎麦屋へ行って、そこの手打ち蕎麦を食べるのと、家で、機械製の乾麺を茹でて食べるのとでは、~意味がまるで違うのだ。蕎麦屋でたぐる蕎麦は、本来、腹ふさぎに食べるのではなく、コーヒーや煙草と同様の、一服の気分転換である。~前者が創造的趣味で、後者が消費的生活。こんなにもかけ離れている。】
そうだねえ。私も「腹ふさぎ」でない、ゆったりと、大量ではなく、嗜む食事を、これからの人生では機会多く、もうけたいものだと。それが大人だね、きっと。

【私は34歳のときに「隠居宣言」をしました。仕事は極力セーブして週に3日以上働かず、4日は休むことにする…月の半分も働けば、何とか生活できた江戸の暮らしに似ています。
隠居するには、ある程度の決意が必要です。まず第一条件は家族がいないこと。芭蕉だってあっさり家族を捨ててしまいましたもの。】
実際には、体が絶好調ではなかった、が一番の理由らしい(亡くなって初めて真実が明かされた…近い人にもカモフラージュしていた模様)。荒俣宏氏と夫婦だったことは有名ですが、同居せず、それも半年で解消したとか。

【中年と呼ばれる年になり、いつしか、生より死の比重が勝って来た。もう、夕暮れは、かなしくはない。自身のかなしみよりも、置き去りにされる、かなしみのほうが、より重たい。かなしみは慈しみの肥やし、という。かなしみを受け容れてこそ、他者への慈しみのこころを養う。かなしむことは、慈しみとおなじ、愛の表現で、それはひとに与えられた、最強の力かもしれない。】

井上安治という風景画家についてあり、享年25歳(明治22年没)と。なんとなく気になったら、この切手の人だった。見覚えあるし、大切に持っている。好きだ。
【私たちは、安治の目玉を通して、百年前の東京を、まるでそこにある窓外の景色として、体験できる。】
川瀬巴水も、思い出した。
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