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日本語教室 [よんでみました]

日本語教室 (新潮新書)

日本語教室 (新潮新書)

  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 単行本

母校・上智大学での4回の講演をまとめたもの。まだまだ予約者待ち状態、です。
【キーワードは「カタカナ倒れ」と「漢字倒れ」です。程のいい漢字の量で、ひらがなとカタカナをきっちり使って、正確で奥行きの深い、そういう文章を書いたり読んだりするためには、どういうふうに考えればよいのか。私たちは、まさに今、そのことを問われているのです。】

【私は芝居を書いていますが、なるべく「い」の音を生かすように気をつけています。たとえば銀行を使うのなら、もう三菱に決まりです。~音だけの問題です。「みつびし」だと、4つの母音のうち3つが「い」の音ですからね。ところが上に東京がついてしまったので、ちょっとやりにくくなりました(笑)。住友、は、俳優さんがどんなにしっかり発音しても、最初の「す」という音が消えるのです。だから、客席の後ろのほうの人たちには「みとも銀行」というふうに聴こえてしまいます。~】

【ぼくは新しく字引を買うと、すぐ「しょうか」という項目を見ます。すると、~「小火」に始まって、「消火」「消夏」「唱歌」「商科」「商家」など(例えば)62個も並んでいます。こんなふうに、日本語というのは、同じ音なのに意味の違う言葉がたくさんある言語の代表格なのです。】

【日本語は母音が5つしかないし、音節だって115くらいなものです。ですから、外国人には、日本語の発音は非常にやさしくて、会話はみなさんすぐ上手になります。~日本語は発音を覚えて、次に音標文字である平仮名と片仮名が読めるようになるところまでは非常にやさしい、しかし、本格的に読んだり書いたりする段階になると、世界で最もむずかしい言語の1つになる。~】

「は」と「が」の使い分けの話も興味深かった。「むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんは住んでいました」とは言わない。(私たちは)自然に「は」と「が」の違いを身につけているということ。(後略。むしろその違いを文法的に説明することが、難しい…)

『アメリカ、僕は好き』と書いておられます。憲法運動もされてきた井上さんですから、もちろん理由あっての発言です。真意は、例えば圧倒的多数が空爆支持、ブッシュ支持というときに、きちんと反対する人は反対する、と。(そういう少数意見が、きちっと認められる国であるということ。横並び、に全員が流されない、ということか。)
私もそういう観点で、まさに“自由の国”だということに最近どこか憧れています。数年前よりも、米に。

井上さんは、なぜここまで日本語に詳しいのでしょう。他に類書もたくさん刊行されてますね。もっと突き詰めてみたい気もします。
間違いなく、手にしてよかった本。
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