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向田邦子全集 新版 別巻2  [向田邦子と妹・和子]

向田邦子全集〈別巻2〉向田邦子の恋文・向田邦子の遺言

向田邦子全集〈別巻2〉向田邦子の恋文・向田邦子の遺言

  • 作者: 向田 邦子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/04
  • メディア: 単行本

『向田邦子の恋文・向田邦子の遺言』
生誕80周年記念出版の「向田邦子全集 新版 全13巻」もこれがラスト。この巻は、邦子さんに関する資料ではあるが、和子さんの作によるもの、といっていいだろう。
向田さんがかわいがった9歳離れた妹・和子さんが著した、姉の恋人の存在を公にした「向田邦子の恋文」、そして「向田邦子の遺言」は、単行本で既に読んでいたが、それでもひきつけるもの・考えさせるものがあった。そして、私は妹・和子さんが書く文章もとってもいい、とあらためて思った。
【どこで命を終るのも運です。体を無理したり、仕事を休んだりして、骨を拾いにくることはありません。】
この一言に、向田邦子のいさぎよさのようなものがあらわれていると思えてならない。

【死の2年前、N氏(邦子の恋人・カメラマン)は脳卒中で倒れ、足が不自由になり、働けない状態にあった。私がそのことを知ったのは、姉の死から20年経った平成13年の夏、姉の“秘め事”を自分の責任において公開した方がいいと決めたからである。NHKの衛星放送が没後20年のドキュメンタリー番組をつくり、そのなかで紹介された。番組のスタッフが調べてくれたところ、N氏は自ら死を選んだという。】
N氏が亡くなったのは昭和39年2月のことである。そして、この10月に、向田さんは実家を初めて出て独立する。34歳。東京オリンピック開会式の日にアパートを探している。もちろん、この時、数カ月前に最愛の男性を亡くしたことを家族は一切知らなかった。すべてわかったのはずーっとずーっとのち、本人が亡くなったあとのことなのである。

私は2度読んで、N氏はかいがいしく世話をする向田さんを愛するがゆえに死を選んだのだとわかった。
もちろん向田さんの哀しみは大変なものだったろう。誰にも打ち明けず、ひとりで苦しんだと思われる。
でもN氏は、これ以上向田さんの重荷になってはいけない、と判断した結果だったのだ。
死の前日のN氏の日記は普通だ。それまでの日記と変化はない。
N氏には妻子がいたが、病もあり、すっかり家族と暮らしは別になっていた。N氏宛てに向田さんが差し出した手紙の束が、亡き向田さんのマンションに保存されていたが、それはN氏の母親が向田さんに託したものだった。そのことからもN氏の母が2人をあたたかく見守っていたことがわかる。

昭和44年に向田さんは実父(64歳)を亡くした。
【(母・せいさん)もしお父さんが生きていたらどんなに(活躍を)喜んだかと思うんですけど、お父さんがいたら邦子も『父の詫び状』は書けないし、『寺内貫太郎一家』もできなかったねって、みんなで笑うんですよ。】
家族が遠回しにでもモデルになっているということは、そういうことなんでしょうね。特に厳格なお父様のようでしたから。
母・せいさんが邦子さんについて語られている文章は今回初めて読みました。一昨年の秋に100歳で大往生されましたね。邦子さんは享年51歳。お母様は早くに邦子さんを亡くし、無念だったことでしょう。
でも、邦子さんが遺言(といっても正式なものでなく、手紙のような。)した通り、娘・和子さんがいつも一緒にいて、穏やかな晩年だったことと思います。
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