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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー [よんでみました]

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

  • 作者: ブレイディ みかこ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 単行本

社会派ノンフィクションとの情報だったので、もう少し堅苦しい作風かと思っていたら、とても読みやすかった。本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞。NHK「あさイチ」に著者が出演した回を見たが、博多大吉さん(衿のひいき)との絡みも何ともよかった。

1965年福岡市生まれ。保育士・ライター・コラムニスト。96年から英国ブライトン在住。
配偶者(←著者表現ママ)はアイルランド人。息子の中学校生活の最初の一年半を書く。

金融機関に勤めていた配偶者。リストラ後、同じような仕事に就くのかと思っていたら、
【「子どもの頃にやりたいと思っていた仕事だから」と言って大型ダンプの運転手になった。わりと思いきったことをする人である。】
よいな。そしてきっと著者自身も思いきった人なのではと思った。

【(略)子どもがこういう時代錯誤なことを言うときは、たいていそう言っている大人が周りにいる、というのがわたしの経験知だ。】
間違いなくそうなのだろう。だから恐ろしい。親(大人)は下手なことは言えない。
【たぶん彼(=息子)は、人種差別の話をする相手は、白人の父親ではなく、東洋人の母親だと思っているのだ。~彼の中には「白人」と「非白人」の二つの部分が別々にあって、その二つは必ずしも一つに融け合っているわけではないようだ。】
実にこの息子は母親と会話をしている。そして、母親はいつでも大人ぶらずに対等に話す
時には(いつも、かな)息子によって視点が広がっていく
《もしかすると彼は、もう少ししたら母親に口を開かない年齢になるのかもしれない。そうだとしたら、これが大切な密な時期なのだと。

【(息子に)「楽ばっかりしていると、無知になるから」。~(略)「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」】
深い。
【「自分で誰かの靴を履いてみること」…英語の定型表現であり、他人の立場に立ってみるという意味だ。】
【「子どもの権利を三つ書けっていうのは何て答えたの?」と尋ねると、息子は言った。「教育を受ける権利、保護される権利、声を聞いてもらう権利」~】

著者の父親(日本で暮らす祖父)と息子は仲がいい。息子はまったく日本語ができないそうだが、ふたりはコミュニケーションが取れている。
「日本語を何でおしえないのかー!」と偶然居合わせた客に言われたり、DVDを借りる際、日本在住でないから~のヘンな壁の一件(邦人の視野の狭さというのか…)、本当に腹立たしい。日本はそういう閉鎖的な考え方がまだまだあると思う。
日常の暮らしの中で、自然に世界を学んで育っている以上に素晴らしいことがあるのか、と言いたい。

【「どんな夏休みだった?」って聞いたら、「『ずっとお腹が空いていた』と言った子がいた」】
【~まずご飯を食べさせないと、それ以外のことなんてできるわけがない。】
「給食制度」のことを思い出す。家庭環境などによっては、学ぶため、それ以前にまず「食」が必要。

上記はごく一部のエピソード。人はいろいろ、家庭環境もさまざま、生まれも違う。
我が国にももちろんあろうが、ここまで身近に真剣に考えて生きていく体験は、(古い表現だが「島国」)日本では得にくいと思う。大変なこともあるが、世界の問題を自分のこととして疑問を持ち、人間として前へ進むのはこういう暮らしなのだと。
ひと言では表せないが、息子さんの学校選び(生徒や先生の意欲、って日本の学校ではあまり感じられないのでは?私が知らないだけ?)や友人らを通じて、かみ砕いてそれらをやさしく紹介してくれたのがこの本だ。

…コロナ禍で以前よりNHK BS-1の国際ニュースにチャンネルを合わせることが多くなったが、これから少しでも自分の国以外のことを感じていかないと~、といい歳ですが強く思ったのでした。
《それと、最初から最後までとてもわかりやすく、それまでの謎の部分が読み進めていくとちゃんと織り込まれていて森まゆみさんに次ぐ、真似したい文章のライターさんでした☆》