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道行きや [よんでみました]

道行きや

道行きや

  • 作者: 比呂美, 伊藤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

伊藤比呂美さんの新作エッセイ。アメリカと熊本を往復し父親を介護、その後カリフォルニアで夫を見送り、帰国。熊本と東京を行き来し、早稲田大学で教える。
大学生とのいろいろもあるが、やっぱり私はご本人の、アメリカ気質に合うと思われる、大胆で開けっぱなしなご自身の日常の話がおもしろい。

【ある時期はあっちに娘たちがいた。ある時期はこっちに老いた親がいた。ある時期はあっちに老いた夫がいた。ゴムひもに引っ張られるような思いで行き来した。】
【~しかし日本の検疫所は~手取り足取り細かくやり方を指導してくれるので、ああこの客扱いのマメさは日本だ、わたしはそこから出てきたし、そこに帰るのだと、カリフォルニアにいた頃から、心身の引き締まる思いをしていたのだった。】

飼っている犬の記述も多い。
【~走ってきて股の間にもぐりこむ。ほかの犬たちは誰もしない。この犬だけの愛情表現である。~河原の土手にすわり、犬を抱いて、流れをみつめる。】

【~わたしは手を振り返し、階段を降りていって、ヨーコさんと抱き合ったとたんに、涙が出た。その涙の仕組みはわからない。】

「みちゆき」、いい言葉である。60半ばになるとそういう心情になれるのかもしれない。