赤い砂を蹴る [太宰治と家族たち]
↑ なぜかまたKindle版しか貼れず。
東京都出身。劇作家。母は小説家の津島佑子。
とまでは紹介されていました。本作で、第163回芥川賞候補に。
「お風呂に入ってそのまま亡くなった」の一文で、この一族、特に母の津島佑子さんの作品をあたってきた私には、当然、津島さんが失くした長男(つまり石原燃さんの父親違いの弟)の状況と同じことに気づく。そのあとにすぐ、主人公が亡くした弟の話も出てくる…。
ブラジルがらみで話は進むのだが、複数の人生が呼応し合い、身近に失った命が語られる。
【大輝がいなくなったあと、ちょっと笑顔を見せただけで子どもを失った母親らしくないと言われることにあらがって、母はわざと赤い口紅をつけていた。】
【お母さんは好きなように生きた。ほんと勝手だった。でも、だからこそ、私も好きに生きていいんだと思えた。もしかしたら、好きに生きていいんだと私に教えるために、お母さんは好きに生きてきたのかもしれない。そう思う。だから。】
石原燃さんの母親は作家だったが、この小説で画家の設定になっている。
津島佑子さんの小説『火の山ー山猿記』(『純情きらり』原案)では、太宰がモデルの冬吾(西島秀俊演じる)は画家として描かれる。
…まちがいなく、母へのレクイエムなのだと思われる作品《そして、筆名「石原」は母方の祖母の旧姓『石原美知子』(←寺島しのぶ演じる)からである》。
今後も新作が出れば追うつもり。
2020-08-28 15:00